大阪弁護士会の活動

人権擁護委員会

1.大阪拘置所が未決拘禁者を約2年3か月にわたって監視カメラ付きの居室に収容した処遇について、プライバシー権等の人権を侵害するものと認定し、「他の方法で未決拘禁目的を達成できない高度の必要性が認められない限り」、監視カメラ付きの居室で収容しないよう警告した事例。
2.大阪拘置所における公職選挙法第2条に基づく国政選挙を実施する場合、被拘禁者が遺漏なく投票権を行使できるよう、投票日及び不在者投票制度の内容、投票の方法等を記載した書面を交付することによって周知することを要望した事例。

2021年(令和3年)3月25日

【執行の概要】

1.大阪拘置所は未決拘禁者である申立人を、2015年(平成27年)3月2日から2018年(平成30年)11月16日までのうち約2年3か月間、監視カメラ付きの居室に収容した。
大阪拘置所が申立人を監視カメラ付きの居室に収容した理由は、「申立人が反則行為や処遇緩和を狙ったと思われる職員に対するけん制行為等を頻回していたことから、拘禁する目的が阻害されることを回避するため」、というものであった。
しかし、未決拘禁者は、有罪の判決が確定するまでは無罪と推定され、刑事司法の目的達成のためのやむを得ない措置として、身柄を強制的に施設に収容されているに過ぎないのであるから、当該拘禁関係に伴う制約の範囲外においては、原則として一般市民としての自由が保障されるべきである。
そして、居室内の監視カメラは、被収容者を四六時中監視の下においてそのプライバシーを侵害し、ひいては人格的尊厳を傷つけるものであるから、監視カメラ付きの居室に収容するためには、監視カメラを用いて居室内の動静まで常時監視しなければ、未決拘禁者の勾留目的や施設内の規律及び秩序を維持できない「高度の必要性」が認められ、かつ、その場合においても、「監視の方法・態様・期間等が障害発生防止のため必要かつやむを得ない範囲内」にとどまっていることが厳格に求められる。
大阪拘置所が述べる理由では、約2年3か月もの長期間、断続的に居室内での動静を監視カメラで把握することまでを正当化することはできない。

2.大阪拘置所では公職選挙法に基づく投票は不在者投票の方法によって行われるところ、国政選挙が実施される場合には、通常、全収容者に対し、放送設備を使用して、当該選挙の不在者投票に係る告知放送が2回行われることにより被収容者に告知されるだけで、それ以外の方法による周知は行われていない。
しかし、憲法は、国民主権の原理に基づき、国政選挙に際して国民に対して投票をする機会を平等に保障しているところ、未決拘禁者は無罪推定が及んでいる者であるから、通常生活をしている場合と同様に投票の機会が保障されなければならないので、未決拘禁目的に伴うやむを得ない制約を除き、未決拘禁者全員が選挙権を遺漏なく行使できるよう周知すべきである。
未決拘禁者の不在者投票制度は、変則的な不在者投票制度となっており、通常人においてその内容を正確に理解することは必ずしも容易でない上に、未決拘禁者が常に室内放送に注意を払っているとはいえないから未決拘禁者が聞き漏らす場合があり得る。
現在の大阪拘置所が採っている周知措置のみでは、通常の生活をしている場合に選挙公報の配布等による周知措置が講じられていることとの比較において、国が国民に対して行うべき周知措置としては、あまりにも貧弱な措置しか講じていないといわざるを得ず、未決拘禁者の平等な投票機会の保障を全うすることができないおそれがある。

1.大阪拘置所が未決拘禁者を約2年3か月にわたって監視カメラ付きの居室に収容した処遇について、プライバシー権等の人権を侵害するものと認定し、「他の方法で未決拘禁目的を達成できない高度の必要性が認められない限り」、監視カメラ付きの居室で収容しないよう警告した事例。
2.大阪拘置所における公職選挙法第2条に基づく国政選挙を実施する場合、被拘禁者が遺漏なく投票権を行使できるよう、投票日及び不在者投票制度の内容、投票の方法等を記載した書面を交付することによって周知することを要望した事例。

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