大阪弁護士会の活動

人権擁護委員会

1 拘置所が、配室上の都合により、1ヶ月以上もの期間、未決拘禁者を露出した監視カメラ付き単独室に昼夜収容したことは、同拘禁者のプライバシー権を侵害していることから、拘置所に対し、今後、他に空き室がない等、配室上の都合により監視カメラ付き単独室へ収容せざるを得ない場合には、プライバシー権を徒に侵害することがないよう、監視カメラ付き単独室の監視カメラを遮蔽する等の措置を講じるよう勧告した事例。
2 拘置所が、明確な証拠がないにもかかわらず、未決拘禁者が故意に手錠の腕輪を外した疑いから動静を綿密に視察する必要があったとして、2ヶ月以上もの期間、同拘禁者を監視カメラ付き単独室に昼夜収容したことは、同拘禁者のプライバシー権を侵害していることから、拘置所に対し、今後、配室上の都合以外の理由で未決拘禁者を監視カメラ付き単独室に収容する場合は、プライバシー権を徒に侵害することがないよう、監視する高度の必要性があり、かつ、監視の方法・態様・期間等が必要かつやむを得ない範囲にとどまるよう、厳格に限定する運用をするよう勧告した事例。

2022年(令和4年)6月21日

【執行の概要】

1 未決拘禁者を監視カメラが設置された単独室(以下、「監視カメラ付き単独室」という。)に収容することが認められる要件について
未決拘禁者は、有罪の判決が確定するまでは無罪と推定され、刑事司法上の目的達成のためのやむを得ない措置として勾留されているに過ぎない者である。
また、監視カメラ付き単独室は、24時間、カメラにより被収容者の動静を監視するため、通常の居室と比較し、プライバシー権の制約の度合いが高く、常に監視されているとの心理的な圧迫感等を抱かせるものである。
したがって、未決拘禁者を監視カメラ付き単独室へ収容することは、監視する高度の必要性があり、かつ、監視の方法・態様・期間等が必要かつやむを得ない範囲にとどまっていることが厳格に求められる。

2 事例1について
本件で認定した事実によると、対象となった未決拘禁者を1ヶ月以上もの期間、監視カメラ付き単独室へ収容したのは、改築工事により単独室が常態的に不足していたための、配室上の都合によるものであった。
しかし、当時、同拘禁者を管理カメラで昼夜監視する高度の必要性などなく、監視カメラ付き単独室へ収容する場合でも、監視カメラを遮蔽する等の措置を講じることは容易であった。
したがって、拘置所が、同期間、監視カメラを遮蔽する等の措置を講じないまま、漫然と申立人を監視カメラ付き単独室に収容したことは、申立人のプライバシー権を侵害しており、再発防止を期して、勧告した。

3 事例2について
本件で認定した事実によると、拘置所が対象となった未決拘禁者を2ヶ月以上もの期間、監視カメラ付き単独室へ収容したのは、同拘禁者が2度にわたって手錠の腕輪が抜けた旨を放言し、自己の左右の手を示してきたことから、同拘禁者が故意に手錠の腕輪から左右の手を抜き取る行為をしたことを疑い、その動静を綿密に視察する必要があると判断したからであった。
しかし、同拘禁者が故意に手錠の腕輪から手を抜き取ったのであれば、同拘禁者自ら「抜けた」と告げることは不自然であるし、自らの手を示すという行動は、一般的には、外れた手錠を嵌めなおしてもらおうとする意思の表明であると受け取れ、手錠の装着方法に問題があった可能性も否定出来ない。
手錠の装着方法に問題があった可能性があり、また、同拘禁者が故意に手錠の腕輪を抜き取った明確な根拠もない以上、同拘禁者が故意に手錠を抜き取ったとする拘置所の判断は、恣意的かつ不合理なものと言わざるを得ず、同拘禁者を監視する高度の必要性があったことを認めることは出来ない。
したがって、拘置所が同拘禁者を2ヶ月以上もの期間、監視カメラ付き単独室に収容したことは、同拘禁者のプライバシー権を侵害しており、再発防止を期して、勧告した。

1 拘置所が、配室上の都合により、1ヶ月以上もの期間、未決拘禁者を露出した監視カメラ付き単独室に昼夜収容したことは、同拘禁者のプライバシー権を侵害していることから、拘置所に対し、今後、他に空き室がない等、配室上の都合により監視カメラ付き単独室へ収容せざるを得ない場合には、プライバシー権を徒に侵害することがないよう、監視カメラ付き単独室の監視カメラを遮蔽する等の措置を講じるよう勧告した事例。
2 拘置所が、明確な証拠がないにもかかわらず、未決拘禁者が故意に手錠の腕輪を外した疑いから動静を綿密に視察する必要があったとして、2ヶ月以上もの期間、同拘禁者を監視カメラ付き単独室に昼夜収容したことは、同拘禁者のプライバシー権を侵害していることから、拘置所に対し、今後、配室上の都合以外の理由で未決拘禁者を監視カメラ付き単独室に収容する場合は、プライバシー権を徒に侵害することがないよう、監視する高度の必要性があり、かつ、監視の方法・態様・期間等が必要かつやむを得ない範囲にとどまるよう、厳格に限定する運用をするよう勧告した事例。

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