昨日(平成28年11月30日),日本弁護士連合会が「養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言」(以下「提言」といいます。)を発表しました(以下において,提言に記載されている算定方法を「新算定方式」といいます。)。

ざっと見たところ,新算定方式は,現在,家事調停・審判で用いられている「簡易迅速な養育費等の算定を目指して」(判例タイムズ1111号285頁,家裁月報55巻7号155頁)記載の算定方式(以下「標準算定方式」といいます。)と比べても,計算の枠組み自体は変わっていません。

 

【計算の枠組み】

基礎収入

=総収入-公租公課-職業費-特別経費

権利者らの生活費

=(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)×権利者らの生活費指数/(権利者らの生活費指数+義務者らの生活費指数)

養育費等額(年額)=

権利者らの生活費×義務者の基礎収入/(権利者らの基礎収入+義務者らの基礎収入)

 

大きく変わると思われるのは基礎収入の算定方法,とくに,特別経費(住居関係費や保険掛金など)についてです。標準算定方式は基礎収入を算定する際に総収入から家計調査年報の統計値を控除しますが,新算定方式は一切控除しません。

その結果,基礎収入が大きくなり,職業費に関する変更点なども相まって「新方式では従来の1.5倍程度となる見込み」(時事通信)だそうです。

 

これから新算定方式と提言がどのような扱いを受けるのかはわかりませんが,この特別経費に関する変更点は,手当をしなければ,家庭裁判所もなかなか受け入れてくれないのではないかと思います。

標準算定方式は特別経費を一律に控除するため,個別の事案で,たとえばどれだけ住宅ローンが高額でも,特別経費に関する事情をほぼ一律に考慮しませんが,新算定方式のように特別経費を一律には控除せず「過大な住宅ローンの負担や障がい者のための特別な支出,私立学校に通う子どもの教育費など個別具体的な必要性に応じて,特別事情として考慮すべき場合がある」(提言4頁)としてしまうと,「特別事情として考慮すべき場合」か否かに関する争いを誘発することが目に見えているからです。

 

しかし,他の点,たとえば,公租公課の値を家計調査年報に記載された値ではなく実際の値を使うことは,すぐにでも受け入れられるでしょうし,生活費指数の年齢区分をもう少し細かくすることも段階的には受け入れられるのではないでしょうか。

 

以上雑感めいたもので恐縮ですが,昨日の今日,昨日発表されたものに対する今日の意見ということでご容赦頂ければ幸いです。

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