弁護士が刑事事件に関わることはよくあります。一番多いのは被疑者・被告人の弁護人となることですが、その反対に、被害者から相談を受けて被害届を出す、という関与の仕方もあります。

 

しかしこの被害届ですが、実は受理してもらうのが難しい。傷害罪など分かりやすい犯罪はすぐに受理してくれますが、犯罪の種類によってはなかなか受理してもらえないこともあります。

 

かなり前の話ですが、以前付き合っていた男性に、自分が署名していない婚姻届を出されたという事件がありました。つまり文書偽造ですが、被害届を受理してもらうため警察に行った際に、「うーん、文書偽造はなかなか難しいですねえ」と言われました。一緒に住んでいた時には殴られたこともあったらしい、と言ったところ、係の方から、「それならすぐに立件できるのですが」と言われたのには、苦笑せざるを得ませんでした。

 

最近、相談を受けた事件は、いわゆる「手形パクリ屋」のケースで、「手形を割り引く」と言って、手形を振出させ、振出人には金を支払わず持って行き、手形を第三者に譲り渡し、振出人に損害を与えたという事案です。

 

これは立派な詐欺です。しかし依頼者が警察に相談したところ「それ民事とちゃいますか」「直接相手方に行った方が早いんとちゃいますか」などと言われて、なかなか受理してもらえなかったようです。窃盗、横領は立件しやすく、詐欺、背任は難しいのですが、このような典型的な取り込み詐欺の事案まで、なかなか受理しようとしてくれないのは困ったものです。

 

もちろん、安易に何でも受理すればよいというわけではありませんが、証拠がないから立件は難しいという返答ならともかく、このケースを聞いた返答が、「それ民事とちゃいますか」というのは、ちょっと情けないなと思いました。

捜査の端緒なんですがね。

犯罪の立証はなかなか厳しいものがあると思います。安易に有罪にされてはたまらないので当然ではありますが。その反面で、被害届や告訴の対応では、警察が、まるで明日にでも逮捕できるかのような状態でないとなかなか対応してくれないような印象を私は持っています。捜査の端緒というところでは、ハードルが高すぎるように思い、先生のブログ内容に非常に共感を覚えました。

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