どうも初めまして、弁護士の中原修と申します。

 

私の興味のある分野からお話しさせていただきます。

 

大阪ダルクの支援を長年させてもらっており、覚せい剤等薬物の依存症の問題にも取り組んだり、覚せい剤取締法違反等の薬物の刑事事件も担当してきました。

 

この度、平成28年6月1日付け「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」が施行されました。これは、近年、薬物使用等の罪を犯した者の再犯防止が重要な課題となっていることに鑑み、刑事施設における処遇に引き続き保護観察処遇を実施することにより、薬物使用等の罪を犯した者が再び犯罪をすることを防ぐため、これらの者に対する刑の一部の執行を猶予する制度とされています。

 

具体的には、大阪地方裁判所での覚せい剤取締法違反事件で「懲役1年4月、うち4月を2年間の保護観察付執行猶予(求刑:懲役2年)」というように言い渡されています。この制度は、再犯防止が目的であり、そのため従来、実刑を言い渡す際に、仮釈放が認められなければ、満期前に出所できないところを、早めに出所を認めて出所後に保護観察所と連携しようとするものです。

 

では、近年、覚せい剤取締法違反で実刑の人数はというと、平成24年で6453人、平成25年で5990人、平成26年で6016人でした。今後とも6000人前後の方が、この制度の対象となると思われます。

 

本当に再犯防止が図れるのであれば、できるだけ多くの方が対象となるべき制度です。しかし、この制度において重要な役割を果たすべき保護観察所はそれに対応できる体制なのでしょうか?現在の保護観察官の人数で対応できるのか、どのような処置・プログラムを実施するのか公表はされていません。仄聞したところでは、既に保護観察所からは裁判所にこの制度の判決の言い渡しを余りしないようにと申し入れをしているとのことで、実際にも言い渡されている事件はそれほど多くはないようです。

 

しかも、覚せい剤取締法違反の被告人は、ほとんどが薬物依存症の病人といわれています。病人に対しては刑罰を科すより治療を優先すべきとの考え方もあり、刑罰と治療のどちらを優先すべきかという議論もあって、この制度は刑罰を優先している点で、再犯防止の効果も未知数といえます。

 

せっかくの新しい制度ですが、今後の運用を待たないとわからない面もあり、現時点では、未知数の多い制度のように思います。

 

刑事事件においては弁護士も薬物使用者が再犯に陥らないように弁護活動をしています。今後、この制度が絵に描いた餅とならないよう効果的な運用がなされることを願っており、この制度の利用において弁護士としてどのようなことができるのだろうかと思案中です

刑の一部の執行猶予

私も刑の一部の執行猶予の運用には注目しています。
執行猶予期間中に任意の尿検査の機会をもつのか、など
処遇・プログラム次第ですよね。
これらが機能しなければ、制度趣旨が台無しですよね。

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