弁護士の放課後 ほな行こか~(^o^)丿 http://www.osakaben.or.jp/blog/posts/131 ja 珍しい公訴棄却の判決について http://www.osakaben.or.jp/blog/posts/131/entry/2309 <p>平成28年12月16日判決について</p> <p>&nbsp;</p> <p>  普通乗用自動車を運転していたAさんが赤信号を無視したとして起訴された事案で,1審裁判所は9000円の罰金刑を言い渡しましたが,大阪高等裁判所では,公訴棄却の判決を言い渡しました。</p> <p>  判決が認定した事実は概ね次のとおりです。</p> <p>&nbsp;</p> <p>   Aさんは,赤信号無視を見ていた警察官からその指摘を受けたが,黄色信号だったとして違反の事実を認めず,対面信号が赤信号であったことを示す車載カメラの映像を見せて欲しいと求めたが,警察官からはそのようなものはないと拒否されたので,交通反則告知書の受領を拒んだ。その後,検察官の取調べにおいて車載カメラの映像を見ることができて事実関係を認め,交通反則通告制度の適用を希望したが,起訴されてしまった。</p> <p>  交通反則告知書とは,&ldquo;反則切符&rdquo;とか&ldquo;青切符&rdquo;などと呼ばれる書類のことです。道路交通法130条は,反則金納付の通告をしないと起訴できないとしていますが,交通反則告知書の受領を拒むなどした場合は起訴できると定めています。</p> <p>  判決は,車載カメラの映像があったのに,ないと言って映像を提示しなかった警察官の対応を「甚だ不誠実というほかない」としたうえで,「被告人が,交通反則告知書の受領を拒んだのは,警察官らの上記のような不誠実な対応がその一因をなしている」から,本件が交通反則告知書による告知ができなかったというのは「被告人に対して酷であり,信義に反する」として,道路交通法に定める告知ができなかったときに当たらないとし,検察官の起訴は,道路交通法130条に掲げられた手続を行わずにしたもので,無効であるとしました。</p> <p>  形式的に事実を当てはめた判断ではなく,実態に即した事実を認定した上でなされた至極真っ当な判断というべきもので,まさに血の通った判決といえます。</p> <p>&nbsp;</p> <p>判決は,Aさんが警察官にカメラ映像の見せるよう求めたことを「格別不当なことではない」としていて,被疑者・被告人を単なる捜査の対象=客体として見るのではなく,刑事手続の当事者=主体と見ていることが窺われ,その点でも高く評価されるべきと思います。結論ありきのつまみ食い的に事実を認定して有罪判決を言い渡す事件も散見される中では特異で際立って見えてしまうのも残念ですが,今後もこのような判決が増えてくれること強く望みます。</p> http://www.osakaben.or.jp/blog/posts/131/entry/2309#comments Mon, 26 Dec 2016 02:17:02 +0000 027437 2309 at http://www.osakaben.or.jp/blog 「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」について http://www.osakaben.or.jp/blog/posts/131/entry/2243 <p>どうも初めまして、弁護士の中原修と申します。</p> <p>&nbsp;</p> <p>私の興味のある分野からお話しさせていただきます。</p> <p>&nbsp;</p> <p>大阪ダルクの支援を長年させてもらっており、覚せい剤等薬物の依存症の問題にも取り組んだり、覚せい剤取締法違反等の薬物の刑事事件も担当してきました。</p> <p>&nbsp;</p> <p>この度、平成28年6月1日付け「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」が施行されました。これは、近年、薬物使用等の罪を犯した者の再犯防止が重要な課題となっていることに鑑み、刑事施設における処遇に引き続き保護観察処遇を実施することにより、薬物使用等の罪を犯した者が再び犯罪をすることを防ぐため、これらの者に対する刑の一部の執行を猶予する制度とされています。</p> <p>&nbsp;</p> <p>具体的には、大阪地方裁判所での覚せい剤取締法違反事件で「懲役1年4月、うち4月を2年間の保護観察付執行猶予(求刑:懲役2年)」というように言い渡されています。この制度は、再犯防止が目的であり、そのため従来、実刑を言い渡す際に、仮釈放が認められなければ、満期前に出所できないところを、早めに出所を認めて出所後に保護観察所と連携しようとするものです。</p> <p>&nbsp;</p> <p>では、近年、覚せい剤取締法違反で実刑の人数はというと、平成24年で6453人、平成25年で5990人、平成26年で6016人でした。今後とも6000人前後の方が、この制度の対象となると思われます。</p> <p>&nbsp;</p> <p>本当に再犯防止が図れるのであれば、できるだけ多くの方が対象となるべき制度です。しかし、この制度において重要な役割を果たすべき保護観察所はそれに対応できる体制なのでしょうか?現在の保護観察官の人数で対応できるのか、どのような処置・プログラムを実施するのか公表はされていません。仄聞したところでは、既に保護観察所からは裁判所にこの制度の判決の言い渡しを余りしないようにと申し入れをしているとのことで、実際にも言い渡されている事件はそれほど多くはないようです。</p> <p>&nbsp;</p> <p>しかも、覚せい剤取締法違反の被告人は、ほとんどが薬物依存症の病人といわれています。病人に対しては刑罰を科すより治療を優先すべきとの考え方もあり、刑罰と治療のどちらを優先すべきかという議論もあって、この制度は刑罰を優先している点で、再犯防止の効果も未知数といえます。</p> <p>&nbsp;</p> <p>せっかくの新しい制度ですが、今後の運用を待たないとわからない面もあり、現時点では、未知数の多い制度のように思います。</p> <p>&nbsp;</p> <p>刑事事件においては弁護士も薬物使用者が再犯に陥らないように弁護活動をしています。今後、この制度が絵に描いた餅とならないよう効果的な運用がなされることを願っており、この制度の利用において弁護士としてどのようなことができるのだろうかと思案中です</p> http://www.osakaben.or.jp/blog/posts/131/entry/2243#comments Fri, 15 Jul 2016 00:59:23 +0000 027437 2243 at http://www.osakaben.or.jp/blog