息子のボール民家に、住人「捨てた」 (2015年7月18日掲載)

Q. 小学生の息子が、誕生日に買ってあげたサッカーボールで友達と遊んでいたら、ボールが公園外に出て近くの民家の庭に入ってしまいました。インターホンを押すものの不在で、その日はあきらめて翌日に訪ね、ボールを取ってほしいとお願いしたところ住人から「ボールは捨てた」と素っ気ない態度で言われました。息子は泣きながら帰ってきました。ボールは返してもらえないのでしょうか。本当に捨てられていた場合、弁償してもらえるのでしょうか。 

■所有者に返還求める権利 損害賠償請求の可能性も

A. 物の所有者には、物を支配している状態が侵害された場合、実際にその物を持っている人に対し、返還を求める権利が認められています。民法にはこの権利について定めた条文はありませんが、所有権が物を直接支配する権利があるという性質上、返還請求も当然認められると考えられています。
 今回のケースでは、サッカーボールの所有者は息子さんです。ボールが民家の庭に入ってしまったことで、息子さんがボールを支配している状態が侵害されたといえるのです。そこで、所有権に基づき、その家の人に対し、ボールを返すよう請求することができます。「ボールをとってください」とお願いする方法と、「ボールをとらせてください」と伝えて庭に入ることを許可してもらう方法のどちらも可能です。
本当にボールが捨てられていた場合、損害賠償を請求できる可能性があります。民法では「故意または過失によって他人の権利を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任(不法行為責任)を負う」と定められています。
 今回のケースでは、ボールが捨てられたことで息子さんの権利が侵害され、損害が発生したといえるでしょう。そして捨てた人が、そのボールが他人の物と分かりながらわざと捨てた場合や、他人の物と「分かり得た」のに捨ててしまったような場合、「故意または過失」が認められるので、不法行為が成立するといえます。
 その結果、ボールを捨てた人に対し、損害賠償を請求することができるようになります。民法では、不法行為の損害賠償については、金銭で賠償することが原則と定められています。損害を金銭的に評価した額(ボールの時価相当額)を支払うよう請求できます。

<回答・小林哲平弁護士(大阪弁護士会所属)>

※記事内容は掲載当時のものであり、現在の制度や法律と異なる場合もございます。

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