風邪気味の同僚 マスク着用促したい (2016年1月16日掲載)

Q. 風邪などに気をつけないといけない季節。デスクワークの職場で前の席の先輩がくしゃみだけでなく、何度も口を押えずにせきをします。「風邪気味」と言っていたのでマスク着用をお願いしましたが、無視されました。せきの音も気になり、仕事になりません。なんとかできないものでしょうか。

■マナーの問題強制できず 当事者で話し合いを

A. 風邪やインフルエンザの飛沫感染を防ぐためにはマスク着用が効果的です。風邪などの疑いがある人は、会社など多数の人に感染の可能性がある場所ではマスクを着けるか、せめて他人から顔を背けるなどの配慮がほしいところです。
 さて、マスク着用はあくまでもマナーであり、法律上の義務はありません。したがって、マスクを着用しない他人に対し法律上、着用を強制することはできません。
 弁護士として多くの方から相談を受けていると、マスク着用の問題のように「気持ちは分かるけれども法律では解決できない」という問題をよくお聞きします。単にマナーやモラルなど道徳的な問題を問うことが多いようです。しかし、道徳的な価値観は人によってさまざまで、これらをすべて法律で決めてしまうと、かえって息苦しい世になりかねません。法律も万能ではないのです。
 ただし、法律では解決できないからと言って、ご質問のような場合に泣き寝入りをするしかないというものでもないでしょう。おかしいと思うことは相手に明確に伝えて話し合うべきです。相手が聞く耳を持ってくれないなら、勤務先の上司など適切な第三者に相談すべきです。当事者同士で話し合って解決するという努力がまず大事だと思います。
 もっとも、相手に法律上の義務がないことを求め過ぎると、単に個人の道徳観や価値観の押し付けとなりかねません。法律上の問題なのか道徳の問題なのかがはっきりしない場合は、弁護士に相談して確認するのもよいのではないでしょうか。

〈回答・小仲真介弁護士(大阪弁護士会所属)〉


※記事内容は掲載当時のものであり、現在の制度や法律と異なる場合もございます。

ページトップへ
ページトップへ