「国旗の損壊等の処罰に関する法律案」に反対する会長声明

「国旗の損壊等の処罰に関する法律案」に反対する会長声明

 1 自由民主党、日本維新の会、国民民主党及び参政党は、本年6月16日、合同で「国旗の損壊等の処罰に関する法律案」(以下「本法案」という。)を国会に提出した。
 
 2 本法案において、「国旗」とは、国旗及び国歌に関する法律(平成11年法律第127号)に定める国旗として用いられていると社会通念上認められる有体物とされているが(本法案第1条)、社会通念なるものが曖昧であり、どこまでが処罰の対象となる「国旗」であるのか判然としない。
 また、本法案は、「人に著しく不快または嫌悪の情を催させるような方法」で損壊する行為を処罰対象としているが(本法案第2条1項)、人の主観を基準にしているため明確性に欠けており、処罰対象となる行為を限定するものとは言い難い。
 以上の点は、刑罰の明確性の原則に反しており、罪刑法定主義(憲法31条)の観点から大きな問題がある。
 さらに、本法案は、上記方法に該当するかどうかの判断につき、「行為の外形、周囲の状況その他の客観的な事情を総合的に勘案して行うものとする。」としているが(本法案第2条2項)、「総合的に勘案」する以上、恣意的な判断を払拭することはできず、運用次第によっては民主制の基礎ともいえる自由な表現活動を制約ないし委縮させることになりかねない。
 なお、諸外国には、自国国旗の損壊を処罰する国も存在するが、制定経緯や保護法益が様々であり、単純に比較すること自体が不適当であるうえ、米国の連邦最高裁では、1989年、国旗損壊を処罰する法律が違憲であるとの判断がなされている。

 3 政府は、1999年6月11日、「国旗・日の丸、国歌・君が代」法制化等に関する質問に対する答弁書で、「国旗の損壊等を新たに刑罰の対象とすることは考えていない。」と述べているところ、その後、刑罰法規を制定して、本法案の保護法益とされている「国旗を大切に思う国民感情を保護」すべき必要性が生じた事情は窺えない。
 また、刑法第92条の外国国章損壊罪により外国旗が保護されていることから、日本国旗も同様に保護されるべきとの主張もあるが、同条は、「日本と外国の間の円滑な国交を守る」ことを保護法益として、刑法上の「国交に関する罪」の章に規定されており、本法案とはその保護法益を全く異にするものである。
 なお、自由民主党は、2012年にも国旗損壊罪を新設するための刑法改正案を国会に提出しているが、日本弁護士連合会は、同年6月1日付けの「刑法の一部を改正する法律案(国旗損壊罪新設法案)に関する会長声明」を発出して反対の意見を表明し、その後、同改正案は廃案となっている。 

 4 以上のとおり、本法案の制定は、憲法31条が定める罪刑法定主義に違反するとともに、憲法21条が保障する表現の自由に抵触するおそれが強いうえ、そもそもの立法事実が存在しないと言わざるをえない。
 したがって、当会は、本法案の法制化に強く反対する次第である。

2026年(令和8年)6月30日
               大 阪 弁 護 士 会
                会 長 中 井 洋 恵

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