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 議事録の氏名開示に関する要請書

大弁委第129号
2002年(平成14年)11月19日
司法制度改革推進本部
司法アクセス検討会 御中
大阪弁護士会
 会長 佐伯照道

第1 要請の趣旨

司法アクセス検討会の議事録において、発言者名を開示されるよう要請します。

第2 要請の理由

  1.  今次の司法制度改革は、司法制度改革審議会最終意見書が、21世紀のわが国社会における司法のあり方として、「国民が、容易に自らの権利・利益を確保、実現できるよう、そして、事前規制の廃止・緩和等に伴って、弱い立場の人が不当な不利益を受けることのないよう、国民の間で起きる様々な紛争が公正かつ透明な法的ルールの下で適正かつ迅速に解決される仕組みが整備されなければならない。」と述べているように、国民が権利の主体として自らの権利を守ることのできる仕組みづくりを課題としています。
     つまり、国民が主体的に司法をはじめとする諸制度の構築および運用に関わることを今後の成熟した民主主義社会のあり方として求めているのです。意見書は、そのような理念を示すものとして、「国民一人ひとりが自立的でかつ社会的責任を負った統治主体として公正な社会の構築に参画することを21世紀の課題として位置づけ」るとも述べています。
     貴検討会をはじめ11の検討会におかれては、このような司法制度改革審議会の基本的な制度設計を具体化するものとして具体的な制度作りに取り組まれているところであり、そのご苦労には多大の敬意を表するところです。

  2.  さて、検討会における議事録の公開は全検討会で実施されているところですが、議事録に発言委員の氏名を記するかどうかという点については、それぞれの検討会での判断に委ねられているところです。しかし、議事録の公開は原則として発言者名の開示をも内容とするものであり、発言者を匿名にするという制限的公開にとどまるならば、その積極的根拠が必要だろうと思われます。そして、貴検討会では、匿名にすべき積極的根拠がないと思料されるにもかかわらず、残念ながら議事録において発言者が匿名とする取り扱いがなされてきています。
     しかし、上記審議会意見書は、単に作られた制度の運用に国民が主体的に関わることを求めるだけでなく、諸制度の構築にかかる部分についても、国民の主体的な参画を理念としているのであります。近時、各種審議会等の制度設計作業においてパブリックコメントが募集されているのも、同様の理念に基づくものと思われます。国民が制度作りに主体的に関与する場面の拡大はわが国の民主主義の発展にとって重要な仕組みです。そのような理念に照らすとき、司法制度改革の具体化を検討する検討会での審議が匿名というのは、制度作りに国民が主体的に参加するという理念とはあまりにもそぐわないものであるとともに、これまでその弊害が指摘されてきた行政の不透明性という問題に逆戻りするとの印象をも与えるものです。また、司法制度改革推進法の審議において、森山真弓法務大臣は、「司法制度改革の作業をオープンにし、国民の意見を反映させることは重要であると認識している。したがって、推進法に基づいて改革を進めるにあたっては、国民への積極的な情報開示に努め、改革推進過程の透明性を確保します」と述べられているところでもあります(平成13年10月18日の衆議院法務委員会議事録)。
     司法制度改革はわが国の司法制度を全面的に大きく変革しようというものであり、その議論は各界各層の議論を背景にした国民的議論でなければなりません。司法改革の諸制度は、最終的には国会において法案として審議されるべきものですが、検討会での議論は、それの前作業としての審議であり、その審議の公開性は国会に準じて考えられるべきものでもあるといえます。 

  3.  とりわけ、同検討会には、司法へのアクセス拡充という国民にとって非常に関心のあるテーマが取り上げられておりますので、そこでの議論は国民に広く公開され、また国民からも広く意見が寄せられることが求められます。
     国民一人一人の発言が尊重され、少数意見であったとしても尊重されるべきこと、これらのルールが徹底されることが民主主義の実践として必要です。そのためには、委員がそれぞれの意見を氏名を開示して意見を表明することを実践すべきです。
     とくに、貴検討会では、本年11月28日以降は弁護士報酬の敗訴者負担制度というとりわけ国民の関心の高いテーマについて議論されようとしています。このような時期において、なお議事録の匿名を維持されるようでは、検討会での議論は国民に背を向けた議論をしているのではないかとも疑われかねません。
     国民にとって関心の高いテーマであるからこそ、国民に対して委員それぞれが責任を持って表明した意見をあまねく紹介することが、国民が参加した論議とするために必要と思われます。この機会に、再度、是非発言者名を開示することをご検討下さい。
     もし、なお匿名性を維持されるのであれば、その理由を国民に対して具体的に明らかにされることを求めます。
     議事録において発言者名を開示するかどうかについての再検討を敗訴者負担制度の本格的な議論が開始される前に是非行っていただきたく、次回の司法アクセス検討会(平成14年11月28日)で議論され、是非とも発言者名を開示されますよう要請します。
以 上
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