昨夜、国民保護法・米軍行動円滑化法など有事関連7法・3条約承認案件が、参議院本会議において可決され、成立した。
これまで大阪弁護士会は、これら有事関連7法等が(1)「自衛」の範囲を大きく越え、憲法の平和主義の基本に背馳する性格が強いこと、(2)憲法の保障する基本的人権を侵害するおそれが強いこと、などを理由に廃案を求めてきた。
今国会での審議経過をみても、当会が指摘した有事関連7法等の危険性は払拭されていない。逆に、平時においても日常的に地方公共団体をはじめとする関連機関が「有事に備えて」自衛隊への協力体制をとっていくことが明らかになるなど、憲法が保障する基本的人権を侵害するのではないかという懸念はむしろ強まっている。
言うまでもなく日本国憲法第9条は、わが国が「武力の行使」をすることも「陸海空軍その他の戦力」を保持することをも禁止している。にもかかわらず、米軍行動円滑化法は、わが国が協力する米軍の行動について限定を設けないまま、自衛隊が米軍に対して、役務や武器・弾薬を提供するものとしている。同法に基づき、米軍の軍事行動に自衛隊が協力するという事態が現実となったとき、相手国や他国からは、自衛隊が米軍と一体となって武力を行使していると見られるおそれがある。このような事態は、憲法の平和主義に反すると言わざるをえない。
また、国民保護法については、衆議院審議の最終段階で、政府原案になかった「緊急対処事態」を有事関連法発動の要件とする修正案が提出され、そのまま充分な審議もなしに採択された。この修正案は、先に成立した武力攻撃事態法の目的自体を変更するものであり、それだけでも独立した審議の対象となるべきものであるが、衆議院に引き続き参議院においても、その点について充分な審議が尽くされないまま成立に至った。
以上のような有事7法等の審議過程および内容、さらには、新たな国連決議に基づいて多国籍軍がイラクへ派遣されるときには、自衛隊がその多国籍軍に参加し共同の行動をとる計画の表明などに鑑みると、わが国が、憲法に違反することが明らかな集団的自衛権の行使へなし崩し的に踏み出していくのではないかという懸念を抱かざるを得ない。私たちは、憲法の定める平和主義をないがしろにする、このような傾向を憂慮するものである。
私たちは、こうした有事関連法の審議経過および成立に遺憾の意を表するとともに、「有事」の名の下に、憲法が保障する人権が制約され、国民主権と平和主義がないがしろにされたりすることのないように、有事法制のあり方や運用が、憲法の精神に反することのないように、今後も引き続き厳しく検証していく決意である。
2004年6月15日
大 阪 弁 護 士 会
会 長 宮 崎 誠
|