意見書・声明
意見書 会長声明等

 自衛隊の多国籍軍参加に関する会長声明

6月28日、連合国はイラク暫定政府に主権を委譲し、占領統治を終了した。

日本政府は、直ちにイラクに駐留中の自衛隊を多国籍軍に参加させた。この多国籍軍は、国連安全保障理事会決議1546に基づき、統一された指揮の下にイラクにおける安全及び安定の維持に貢献するため、あらゆる必要な措置をとる権限を与えられている。すなわちイラク国内における治安維持のために武力を行使する軍隊である。

政府は、この決定に際し、「当該多国籍軍の業務のうち武力の行使を伴わない業務に限って、他国の武力の行使と一体化しないということが確保される形で行う」とし、自衛隊は多国籍軍の指揮下には入らず独自の指揮権をもつこと、活動は非戦闘地域に限定されること、イラク特措法に定める人道復興支援に限ること、他国の武力行使と一体化しないこと、など多国籍軍への自衛隊の関与を限定し、憲法上も問題はないとしている。

しかし、上記のような政府の「確保」は、「under unified command」を「統合された司令部」と従来の翻訳を変更して、イラク駐留の自衛隊が多国籍軍の司令部の指揮下に入らないと独自の主張を行い、或いは自衛隊が多国籍軍の指揮下で活動することはないことについて、米英両国の了解を得たなどとするものであるが、あくまで非公式かつ口頭での了解と言うにすぎず、相手の氏名すら明らかにされていない。

政府において、主権委譲後も人道復興支援を継続するのであれば、少なくとも統一された指揮の下の多国籍軍に参加せず、イラク暫定政府との間で個別に協定を締結する方法や、安全保障理事会において別個の決議を受けるなど、国際法上、武力行使を行う多国籍軍と明確に区別される方法をとり得たはずであり、それが憲法上の要請であると考える。

しかるに、政府は、憲法上の疑義に対し、国民への説明責任を果たさないまま、多国籍軍への参加という形で、憲法の形骸化をさらに進めようとしている。

上記のような、外部にはわからない方法によって武力行使を行わないことが「確保」されているという説明は、中東諸国の民衆にとっては全く理解し得ないものであって、これらの人々の目には、米兵の輸送まで行う自衛隊は、武力行使を行う多国籍軍と一体化したものとしてしか見られないであろう。

このような事態は、憲法が平和主義に基づき武力行使を禁止した趣旨に反することはいうまでもない。

よって、我々は、政府に対し、国際法上も多国籍軍と明確に区別された状態に置くなど、平和憲法を遵守する姿勢を明確にされるよう求めるものである。

2004年6月29日

大 阪 弁 護 士 会
会 長 宮 崎 誠

TOP