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 司法修習生の給費制の堅持を求める会長声明

司法制度改革推進本部法曹養成検討会は,本年6月15日に開催された検討会において,平成18年度から,国が司法修習生に対して給与を支給する制度(給費制)に代えて,貸付金を貸与する制度(貸与制)を導入することで意見をとりまとめた。

 これに対し,日本弁護士連合会ならびに多くの単位会は,給費制の堅持を求める声明を次々と発表し,給費制の廃止に反対している。

 当会においても,2003年(平成15年)9月26日,「司法修習生の給費制堅持を求める声明」を発表し,貸与制の導入に反対してきたが,当会は,検討会における上記取りまとめを踏まえ,改めて給費制の堅持を強く求めるものである。

 いうまでもなく,司法修習制度は,司法制度を通じて国民の権利を公正に実現・擁護し,社会正義を具現化するという法曹の使命の重要性・公共性に鑑み,高い専門的能力と職業倫理を兼ね備えた質の高い法曹を養成するため、司法試験の合格後に,司法修習を課すこととしたものである。そして,この目的を達成させるため,司法修習生に関する規則において、司法修習生の兼業を原則禁止する厳しい修習専念義務や守秘義務等を課し,他方でそれらの義務の下での生活を保障するため,給費制が採用されてきたものである。このように給費制は,法曹の使命の重要性・公共性に応えうる質の高い法曹を養成するため,司法修習生が生活の不安なく修習に専念できるようにするための現実的かつ不可欠な基盤となるものというべきである。また,弁護士・弁護士会は、当番弁護士制度・法律相談センター事業・公設事務所の開設,その他弁護士会の委員会活動・人権擁護活動等の広範な公益活動を行ってきているが,このような弁護士の公共性とそれに基づく諸活動を支える弁護士の使命感は,給費制によって裏付けられた修習制度の下でこそ培われたものといえる。

 本年4月からは,新しい法曹養成制度の柱となる法科大学院がスタートしたが,この制度の下では,自らの経済負担において2年ないし3年間法科大学院に在学した後,司法試験を受けることになる。そして、同試験合格後,司法修習生となるが,給費制が廃止されると,貸与金の返済というさらに大きな経済的負担を負うことになる。そのようなことになると,わが国の司法を支えるにふさわしい資質・能力を備えた人材が,経済的事情から法曹への道を断念することも考えられるなど,大きな弊害をもたらすことが予想される。

 以上のとおり,給費制を廃止することは,公共性と高い専門能力・厳しい職業倫理を備えた法曹の養成を担ってきた司法修習制度の根幹を揺るがしかねないもので,司法制度改革が目指す国民のための質の高い法曹養成の理念にも反するものである。

 よって,当会は,貸与制の導入に断固反対するとともに,給費制の堅持を再度強く求めるものである。

2004年(平成16年)7月16日
会長 宮 誠

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