意見書・声明
意見書 会長声明等

 死刑確定者の死刑執行に関する会長声明

 本日、大阪拘置所において死刑確定者1名、福岡拘置所において1名に対し、それぞれ死刑が執行された。

 当会は、日弁連の「死刑制度問題に関する提言」を受けて、2003年1月18日、「日弁連の死刑執行停止法案をめぐって」と題するシンポジウムを開催し、死刑問題に関する全国民的議論が尽くされるまでの間、法に基づき死刑の執行を停止するべきであるとアピールした。

 さらに、本年には、10月の第47回日弁連人権擁護大会において「21世紀日本に死刑は必要か」をテーマとするシンポジウムが開催されるのに先立ち、5月24日、犯罪被害者の視点から死刑制度を考えるため、アメリカの「和解のための殺人被害者遺族の会」代表のレニー・クッシング氏の講演会を、6月26日、「死刑と向き合う人々」とのテーマでプレシンポジウムを各開催し、死刑をめぐるさまざまな問題が活発に討議された。

 死刑については、1989年12月の国連総会で死刑廃止条約が採択され、国連人権委員会は1997年4月以降、毎年、日本などの死刑存置国に対し、死刑廃止に向けて死刑の執行を停止することなどを求めている。また、欧州評議会は、2001年6月、日本とアメリカに対し、死刑執行の停止と死刑廃止に必要な段階的措置をとることを決議したが、わが国はその要求に応じないため、欧州評議会での日本のオブザーバー資格が問題化している。

 アジアでは、カンボジア、ネパール、東チモール等が全面的に死刑を廃止したほか、韓国では1998年以降、死刑執行が事実上停止されており、台湾では2001年5月、法務大臣が2004年までに死刑を廃止する計画を発表した。わが国においても、超党派の国会議員からなる「死刑廃止を推進する議員連盟」は、2003年、死刑制度に関する調査のための死刑制度調査会の設置、死刑執行の停止及び重無期刑の創設等を内容とする法案を策定した。

 わが国の死刑の実態は、政府による密行主義のもと、死刑に関する情報はほとんど明らかにされておらず、死刑制度に関する国民的議論を行う前提を欠く状態にあるといわざるを得ない。

 このような国内外での状況の中で、本日、死刑が執行されたが、報道されているところによると、大阪拘置所での執行については、死刑確定後わずか1年余りで執行されたとのことであり、これまでの実務からすればきわめて異例である。

 死刑問題についてようやく冷静な議論が始められようとしている中、再び大阪拘置所及び福岡拘置所で死刑が執行されたことは誠に遺憾である。当会は、政府に対し、今後、国民的議論が尽くされるまでの間死刑の執行を差し控えることと、議論の前提として、死刑制度に関する情報の開示を強く求めるものである。

2004(平成16)年9月14日

大阪弁護士会
会長 宮崎 誠

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