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 中国残留日本人孤児問題に関する会長声明

 本日、中国残留日本人孤児国家賠償請求訴訟の判決が大阪地方裁判所で言い渡された。中国残留日本人孤児による国家賠償請求訴訟は、全国15地裁において2000名を超える原告が国の責任を明らかにするために闘っている訴訟であり、今回の判決は、全国に先駆けて言い渡された初めての判断である。

 中国残留日本人孤児は、敗戦時、飢えと寒さで親兄弟と死別する中、中国人の家庭に引き取られて生き延びた者たちである。このような孤児たちに対し、日本政府は早期に帰国させる責務を怠り、このため今回の判決を受けた原告のうち、最も早く帰国できた者でも27年間の長きにわたり、中国の地で生活せざるを得なかった。さらに、帰国後も日本語の会話ができず、また、日本社会に容易に適合できる状態ではなかったにもかかわらず、日本政府は、帰国した孤児たちに対し十分な自立援護の施策も採らなかった。

 このため、ほとんどの孤児たちが現在も日本語を習得することができず、それにより、就労が困難となり、そのため、大阪に居住する原告のうち約7割の者が生活保護で生活せざるを得ない異常な事態となっている。

 中国残留日本人孤児の国家賠償請求訴訟の提起は、かかる孤児たちの実態にもかかわらず、国会、内閣がこれまで適切な対応を実施してこなかったことから、やむなく裁判所にその救済を求めたものであり、すでに老後を迎えた孤児たちの悲痛な叫びであるが、今回の判決は原告らの賠償請求を棄却した。

 日弁連は、1984(昭和59)年の人権擁護大会で、孤児の置かれている実態を踏まえ、「中国残留邦人の帰還に関する決議」を採択して、自立を促進する特別の生活保障などの諸措置を速やかに講ずることを求め、さらに2004(平成16)年、人権救済申立に対する勧告の中で、孤児たちが「人間らしく生きる権利」及び「個人の尊厳」を確保しうるだけの立法措置等を講ずることを勧告している。

 この大阪の地でも多くの孤児が生活に窮し、日本社会で生活する上で様々な問題を抱え、「人間らしく生きる権利」及び「個人の尊厳」が奪われている実態が明らかとなっている。

 大阪弁護士会は、政府に対し、孤児たちの悲惨な状況を真摯に受け止め、原告団・弁護団との間で早急に協議を開始し、その責任において、生活や老後に様々な問題を抱える孤児たちのため、その支援策の抜本的な見直しや立法措置を行い、年金の支給等を含む適切な対応を直ちに実施するように強く求めるものである。

以上

2005年(平成17年)7月6日

大阪弁護士会   
会長 益田哲生

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