意見書・声明
意見書 会長声明等

 死刑確定者の死刑執行に関する会長声明

 本日、大阪拘置所において死刑確定者1名に対し、死刑が執行された。

 当会は、日弁連の「死刑制度問題に関する提言」を受けて、2003年1月に「日弁連の死刑執行停止法案をめぐって」と題するシンポジウムを開催し、死刑問題に関する全国民的議論が尽くされるまでの間、法に基づき死刑の執行を停止するべきであるとアピールした。さらに、2004年5月に、犯罪被害者の視点から死刑制度を考えるため、アメリカの「和解のための殺人被害者遺族の会」代表のレニー・クッシング氏の講演会を、そして、同年6月に、「死刑と向き合う人々」とのテーマでシンポジウムをそれぞれ開催し、死刑をめぐるさまざまな問題を討議してきた。来年度には大阪において、死刑執行停止に関する公聴会を開催する予定である。

 死刑については、1989年12月の国連総会で死刑廃止条約が採択され、国連人権委員会は1997年4月以降、毎年、日本などの死刑存置国に対し、死刑廃止に向けて死刑の執行を停止することなどを求めている。また、欧州評議会は、2001年6月、日本とアメリカに対し、死刑執行の停止と死刑廃止に必要な段階的措置をとることを決議したが、わが国はその要求に応じないため、欧州評議会での日本のオブザーバー資格が問題化している。

 アジアでは、カンボジア、ネパール、東チモール等が全面的に死刑を廃止したほか、韓国では1998年以降、事実上の死刑執行が停止されており、本年2月には死刑廃止法案が国会に提出され、審議が進んでいる。

 一方、わが国においては、政府による極端な密行主義のもと、死刑に関する情報はほとんど明らかにされておらず、死刑制度に関する国民的議論を行う前提を欠く状態にある。本日の死刑執行についても、いかなる手続、経緯でなされたのか、しかも、これまでの多くの執行と同様、なぜ国会の閉会中になされたのか、まったく判然としないところである。

 死刑問題について議論が進められようとしている中、再び大阪拘置所で死刑が執行されたことは誠に遺憾である。当会は、政府に対し、今後、国民的議論が尽くされるまでの間、死刑の執行を差し控えることと、議論の前提として、死刑制度に関する情報の開示を強く求めるものである。

2005(平成17)年9月16日

大阪弁護士会   
会長 益田哲生

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