意見書・声明
意見書 会長声明等

 外国人学校の卒業生に対する受験資格の差別的取扱に反対する会長声明

  1.  本年(2005年)秋、大阪朝鮮高級学校(大阪府東大阪市所在)の女子生徒(18歳)が同高級学校の推薦を受けて、大阪市立大学医学部看護学科に公募推薦入試の出願をしたところ、同大学は、同高級学校は学校教育法に定められた「高等学校」に該当しないとの理由で出願を不受理とし、当該生徒の受験を拒否した。

  2.  しかし、現在、文部科学省が2003年9月に発した通知を受けて、国立大学はもとより、ほとんどの公立・私立大学において、朝鮮高級学校の卒業生(卒業見込者を含む)に対して受験資格が認められている。それは、朝鮮高級学校が、形式上学校教育法にいう「高等学校」に該当していなくとも、教育内容において実質的に「高等学校」と異なるところはないことが広く認められている結果である。現に、大阪市立大学においても、「一般入試」の出願資格については、従前から、「高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者」との補充規定を置き、朝鮮高級学校の卒業生は同規定に該当する者であるとして、受験を認めてきた。

  3.  ところが、大阪市立大学は、今般、「推薦入試」の出願資格について同様の補充規定が置かれていなかったことから、今回の不受理の措置をとったものであるところ、「一般入試」と「推薦入試」とにおいて出願資格を異にすべき合理的理由は見出しがたい。大阪市立大学において、「一般入試」において置かれている上記補充規定が「推薦入試」に置かれていない理由は不明であるが、たとえ「推薦入試」において、「一般入試」におけるような補充規定が欠けていたとしても、朝鮮高級学校の卒業生の受験資格に関するこれまでの経緯と現況に鑑みれば、「推薦入試」の出願資格における「高等学校」を、厳密に学校教育法上のそれに限定することなく、朝鮮高級学校を含むとする処理も可能であった。

  4.  大阪市立大学が、補充規定の不存在という形式的理由をもって、当該生徒に対する受験を拒否したことは、何ら合理性のない差別取扱いであり、且つ同人の教育を受ける権利および人格権を著しく侵害するものであって、重大な人権侵害であるといわざるを得ない。

  5.  また、国連自由権規約委員会、社会権規約委員会、人種差別撤廃条約委員会なども、日本政府に対し、朝鮮学校に対する差別的な対応の是正を勧告している。大阪市立大学の今回の受験拒否は、このような国際的な批判に対しても逆行するものである。

  6.  もとより、この問題は、単に、大阪市立大学だけの問題ではない。本会は、大阪市立大学がその推薦入試において朝鮮高級学校の卒業生に出願資格を認めなかったことに対し強く抗議し、かかる不合理な取扱いを直ちに是正することを求めるとともに、国立、公立、私立を問わず、受験資格の是正を怠っている全ての大学が、朝鮮学校を含め、「高等学校」と同程度の教育実態を有すると判断される外国人学校の卒業生に対する受験資格に関する差別的取扱を是正することを強く求めるものである。

2005(平成17)年12月8日

大 阪 弁 護 士 会
会 長 益田 哲生

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