2006年(平成18年)2月9日
大阪府知事 太田 房江 殿
大 阪 弁 護 士 会
会長 益田 哲生
2001年5月11日の、らい予防法違憲国家賠償請求訴訟における熊本地方裁判所判決から5年近くになろうとしておりますが、いまなお、医療体制の不備、生活支援体制の不備、根深い差別偏見の継続など、ハンセン病の患者であった方々の人権は、十分に回復されていない現状にあることはご承知のとおりであります。
この点は、2005年3月1日に公表されました、財団法人日弁連法務研究財団ハンセン病問題に関する検証会議の最終報告書においても明らかにされているところです。
この報告書を踏まえ、日本弁護士連合会は、2005年9月15日付で、国に対し、ふたたび「ハンセン病の患者であった人々の人権を回復するために」勧告(別紙1)を決議し、同勧告書は、日弁連より国の関係省庁に執行され、かつ貴庁にも送付されているところでございます。
今後とも、当会ならびに日本弁護士連合会は、国の関係省庁並びに貴庁と連携して、ハンセン病問題の早期かつ全面的解決に向けて、真摯に努力を続ける所存です。
ハンセン病の患者であった人々の高年齢化が進むなか、全面解決は急がなければなりません。
貴庁におかれても、大阪府にお住まいであるハンセン病の患者であった方々、あるいは大阪府ご出身で帰郷を希望されているハンセン病の患者であった方々が、大阪府において安心して生活していけるように諸政策を講ずることは、喫緊の課題です。
貴庁は、「大阪府ハンセン病実態調査報告書」をまとめられ、「ハンセン病を正しく理解するために」と題するパンフレットを作成され、研修会・講演会の開催、療養所への高校生の体験交流をされておられるとのことであります。
上記の日弁連勧告は、都道府県に関係する勧告として、第2項、第3項において、下記のとおりの、生活支援相談窓口の設置と差別偏見解消策等の充実を要望しております。
つきましては、かかる要望に関する諸施策の実施状況をお知らせいただくようお願いいたしますと共に、諸施策の一層の充実をされたく要望します。
実施状況の回答は、平成18年2月末までに頂ければ幸いです。
記
1 ハンセン病療養所退所者の生活全般を支援する相談窓口を設置すること
2 ハンセン病政策によって形成された差別偏見を除去するために、とくに下記の視点から差別偏見解消策を一層推進すること
- 差別偏見解消策の実施においては、強制隔離などの過去の誤ったハンセン病政策が未曾有の人権侵害を引き起こし、継続させたことにも言及すること
- ハンセン病問題の歴史や国・社会の責任などについて市民に周知させること
- 市民が簡単に入手できるパンフレット、視野に入りやすく分かりやすいポスターを作成するなどして広報活動を拡充するとともに、理解しやすく感銘力の強いドラマやドキュメンタリーなどの番組制作を具体化すること
- ハンセン病問題に関する人権教育の取り組みを積極的に支援し、教材作成、教育実践例の紹介など様々な教育情報を提供すること
- ハンセン病の患者であった人々と市民、とりわけ生徒、学生らが交流する場を積極的に設けること
以上
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