意見書・声明
意見書 会長声明等

 会長声明 ―司法制度改革審議会最終意見の発表を受けて

本日、司法制度改革審議会から司法制度全般に対する抜本的改革に向けた最終意見が発表されました。
最終意見は、二年間にわたる熱心な審議を経てまとめられたものであり、委員はじめ関係各位に対し深い敬意を表するものです。
最終意見では、第1に、司法制度をより利用しやすく、分かりやすく、頼りがいのあるものとすること、第2に、弁護士制度、検察官制度、裁判官制度を改革し、質・量ともに豊かなプロフェッションとしての法曹を確保すること、第3に、国民が訴訟手続に参加する制度の導入等により司法に対する国民の信頼を高めること、を三つの柱とし、数々の改革の課題を提示しています。
大阪弁護士会では、これまで「市民による市民のための司法」の実現を目指して、官僚的司法の打破のため法曹一元制度を導入することや、市民の司法参加のための陪審制の実現、優秀な法曹を養成するための法科大学院の創設等を求めて、司法制度の改革運動を展開してきました。このような立場から見ると、最終意見は、(1) 法曹一元制を直ちに導入するとはしていないものの、裁判官について、その給源の多様化、任命手続や人事制度の見直し等の改革を提言していること、(2) 陪審制を復活させるには至らなかったものの、刑事重大事件に裁判員制度を導入することを提言していること、(3) 法科大学院の創設により質の高い法曹を確保するとしていることなど、その内容は、基本的には我々の目指すものと一致しているものです。
最終意見は、弁護士・弁護士会に対し、21世紀の司法を担う存在として多くの課題を提示しています。我々は、これを重く受け止め司法制度改革に対する責任を改めて自覚すると共に、市民による市民のための司法改革を実現するため、次のような課題に取り組まなければならないと考えます。

第1に、法曹一元に向けて、我々は、弁護士任官を組織的に推進し、他職経験のための判事補の受け容れを進めるとともに、委員の過半数が市民である裁判官推薦委員会を設置するなど、裁判官制度の改革を進めます。
第2に、刑事重大事件について導入されることとなった裁判員制度については、裁判員の数を裁判官より大幅に多数とすることなど、裁判員制度を実質的に陪審制度に近いものとなるよう努力すると共に、行政事件や民事事件、少年事件等にも市民が参加する制度を導入するよう運動を展開します。
第3に、市民に身近な司法を実現するため、裁判官、検察官、弁護士の増員を図ると共に、優秀な法曹を養成するための法科大学院の創設に尽力します。
第4に、弁護士制度の改革については、弁護士自治を堅持しつつ、弁護士へのアクセスの拡充や活動領域の拡大、弁護士倫理等に関する態勢の整備等を行います。
第5に、弁護士費用の敗訴者負担制度の導入は、訴えを起こすことを萎縮させたり、応訴を断念させることにつながり、市民が権利の保全や回復のために司法を利用することに逆行するものです。我々は、この制度の導入には、反対します。
第6に、今回の最終意見では、司法の行政に対するチェック機能の強化について具体的な提言が行われず、今後の検討課題とされました。

行政訴訟制度の改革は極めて重要な課題であり、訴訟要件を緩和することはもちろん行政訴訟制度の根本的な見直しを含め、実効性ある行政訴訟制度の実現を目指します。

大阪弁護士会は、これまで、司法改革100万人署名運動に取り組み、市民集会を開催し、模擬陪審や陪審映画の上映を行うなど、大阪府民と共に司法改革のための活動を続けてきました。また、地域に根差した司法のあり方を考えるという視点から、現在、大阪地域司法計画を策定中です。
我々は、今後も大阪府民と手を携えて、最終意見が着実に実行に移され市民による市民のための司法制度に改革されるよう、さらに一層努力することを誓うものです。



2001年6月12日

大阪弁護士会
会長 水 野 武 夫
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