近時、とくに大阪高等裁判所管内における接見禁止等(刑事訴訟法第81条)の決定数が急増している。勾留請求許可人員数は漸増であるにもかかわらず、接見禁止等の決定がなされた被拘禁者の数は、昭和60年に年間1,399人であったものが、平成13年には年間7,153人と実に5倍以上も急増している。そして、一旦接見が禁止されると、公訴提起後、さらには、第1回公判後も接見禁止が継続される傾向にあり、とくに否認事件ではこの傾向が顕著となっている。このような事態は、検察官により安易な接見禁止請求がなされ、裁判所(官)もこれを無批判に追認していることが最大の原因と言える。
そもそも、刑事訴訟法第81条による接見禁止は、被拘禁者に心理的圧迫を加え、防御権の行使に重大な影響を与えるもので、憲法第34条(抑留・拘禁に対する保障)、同第31条(適正手続)、同第37条(刑事被告人の諸権利)及び国際人権自由権規約第9条(身体の自由の原則)、同第10条(人道的取扱い)、同第14条(無罪推定等)などの諸規定に違反する疑いが強い。少なくとも、現在の安易な接見禁止等の運用は、まさに、被拘禁者に対する精神的拷問にも等しく、到底これを看過することができない。
被拘禁者の人権擁護及び防御権の行使を保障するために、刑事訴訟法第81条の適用は例外的な措置として、真に必要やむを得ない場合に限定されなければならない。よって、検察官に対しては、刑事訴訟法第81条の「逃亡し、又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」が具体的に存在しているかどうかを厳格に判断のうえ請求の適否を決するよう、裁判所(官)に対しては、被拘禁者の人権擁護及び司法的抑制の観点から検察官の接見禁止等の請求に対して慎重かつ厳格に対応するよう、強く求めるものである。
2002年9月24日
大阪弁護士会
会長 佐伯照道
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