内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 離婚 】

夫が妻に無断で離婚届を出した場合の法律関係
私たち夫婦のことでご相談します。
夫が会社の若いOLとつき合っていることを知ったのは、今から半年ほど前のことでした。夫を問い詰めたところ、その女性と二年前からつき合っていることを認めたのですが、何と夫は、私と別れて彼女とやり直したい、ついては離婚して欲しい、と言い出したのです。
夫にはほとほと愛想が尽きたので未練はありません。でも子供はまだ中学生ですし、離婚には同意できないと答えたところ、泥沼状態となりました。モメにモメたあげく、夫はとうとう家を出て、彼女のマンションに転がり込んでしまい、連絡を取り合うこともなくなりました。
その状態がしばらく続いたのですが、知人から夫が彼女と再婚したらしいと聞いて驚きました。離婚を承諾した覚えがないので、そんなことはあり得ないと思っていたのですが、どうも夫は私に無断で離婚届を作成し、役所に提出して受理されていたらしいのです。
果たしてこの離婚届は有効なのでしょうか。また夫の再婚を止める手だてはあるのでしょうか。
相談者: 大阪府にお住まいの43才の女性
協議離婚が有効に成立するためには、協議離婚届に当事者ご本人が離婚する意思で署名捺印していること(代書も可)、そして、離婚する意思をもって役所に届出られることが必要です。つまり、夫婦いずれか一方が離婚する気がない場合に届け出られた離婚届は、たとえ受理されたとしても無効と言うほかありません。ご相談の件では、離婚届が偽造されていること、あなたに離婚の意思がないことから、ご主人が作成し、提出した離婚届による離婚は、無効です。
しかし、この無効については、裁判上、離婚が無効であることを確認してもらい、その結果に基づいて戸籍の訂正を行ってもらう必要があります。そして、この手続については、調停前置主義が採られているために、まず家庭裁判所に離婚無効確認の調停を申立て、そこで解決できなければ同じく家庭裁判所に離婚無効確認の訴えを起こす必要があります。
また、ご主人は、再婚したらしいということですが、あなたとの離婚が無効なので、ご主人の後の婚姻は、重婚と言うことになります。もちろん重婚は、法律上認められておらず(民法732条)、後の婚姻は、取り消されることになります。そして、この手続についても、まず家庭裁判所に婚姻取消の調停を申し立て、そこで解決できなければ同じく家庭裁判所に婚姻取消の訴えを起こす必要があります。
そして、あなたとの離婚が無効であることが確認され、後の婚姻が取り消されれば、あなたとご主人は、依然として婚姻関係にあることが確定されます。
しかし、その場合でも今後も同じようにご主人あるいは第三者から偽造の離婚届が提出され、また再婚されないとは限りません。そこで、このような事態を防ぐために、離婚届での不受理の制度が設けられています。これは、本籍地又は住所地の役場に離婚届出を受理しないようにあなたが申し出ておく制度です。この不受理届出は、届出から6ヶ月間有効ですので、6ヶ月を経過すると再度出し直す必要がありますので注意して下さい。そして、この不受理届出を行っておくと、離婚届では受理できませんので、後の再婚もできないことになります。
出典: 土曜日の人生相談(1999年1月9日放送分)
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