内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 離婚 】

たった一回の浮気と離婚原因
離婚の条件について伺います。
私は結婚して5年になるサラリーマンです。(子供はまだいません)先日、大学時代の同窓会があり、当時つきあっていた女性と再会しました。彼女が未婚だったこともあり、ついつい盛り上がってしまい、その女性と一夜を過ごしてしまいました。
ところがその後、彼女から来た私あての電子メールを、偶然嫁さんに見られてしまい、浮気がバレてしまったのです。私は平謝りに謝りましたが、嫁さんは許してくれず、「離婚する」と息巻いています。私は深く反省しており、二度と浮気はしないと誓うのですが、嫁さんは「もう信頼できない。一緒に暮らせない」と言うのです。
そこで相談なのですが、嫁さんが「何が何でも離婚したい」と裁判所に訴えた場合、私が「たった一度の浮気で離婚したくない。やり直したい」と言っても、離婚は認められてしまうのでしょうか?また、慰謝料を請求された場合は払わなければならないのでしょうか?
相談者: 大阪府にお住まいの男性(30才)
たった1回の浮気であっても、相談者の妻がどうしても許すことができず、これによって相談者に対する信頼が崩れて、もはや修復できないとみられるようになった場合には、裁判所は離婚を認める可能性があります。この場合、妻の相談者に対する慰謝料請求も認められます。
民法は、夫婦の一方が裁判所に離婚の訴えを起こすことができるいくつかの場合について定めています。その一つに「配偶者に不貞な行為があったとき」というものがあり、その意味は、夫もしくは妻が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます。したがって、相談者の妻は、相談者の浮気を理由に裁判所に離婚を求めることができます。
ただし、夫が浮気をした場合であっても、民法は、「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。」と定めています。すなわち、夫の浮気があったことは、あくまでも婚姻関係が破綻しているかどうかを判断するための一つの資料にすぎず、その他の事情を考慮すれば、将来的に円満な共同生活を行って行く余地が残されていると見られる場合には、裁判所は離婚を認めません。たとえば夫が心より反省して妻に謝り、妻もこれを許している場合などがこれにあたります。この他、夫婦間の子供の有無・子供の年齢、夫婦の年齢、資産の程度、婚姻期間なども判断の材料になります。
昭和40年代の古い裁判例ですが、夫の不貞行為などを理由に妻が離婚を求めたケースについて、妻が実家に戻った後も病気の夫を見舞ったりしており、夫の反省次第では再び円満に暮らすことも可能であると認定して、離婚を認めなかった例があります。また、同様の事例で、夫婦がいずれも高齢で、夫が単身で老後の生活をおくることが不安であること等の事情を考慮して、離婚を認めなかった事例もあります。
相談者の場合には、浮気を反省してやり直すことを強く希望しておられるようですが、他方で浮気相手は過去に交際をしていた女性であり、その後も電子メールで連絡をしているようですから、今後も交際が完全に断ち切れるかどうかは疑問の余地があります。また、婚姻期間も5年間と浅く、子供もなく、夫婦ともにまだ若く、例え離婚してもお互い別の相手と再婚するなどやり直しをすることが可能と考えることもできます。このような事情を考えれば、例えば相談者の妻が今回の浮気を決して許さず、相談者に対する信頼が根底から崩れ、将来もずっとしこりを残し、今後円満に共同生活を送ることが不可能と見られる場合には、たった一度の浮気であっても離婚が認められると考えます。
離婚が認められた場合には、妻からの慰謝料の請求も認められますが、不貞行為の回数が1回であることや、相談者が反省していることは、その金額を減額する材料になります。
出典: 土曜日の人生相談(2000年5月27日放送分)
戻る