内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 遺言 】

口頭での遺言は有効か
遺言状についてお聞きします。
私の父は現在病気で入院しています。もう80才近い年齢で、医師からも、それほど長くないとこっそり告げられています。
ただ父は、自宅や土地、株券など、かなりの財産があるにもかかわらず、財産分けについて遺言状を残そうとしないのです。私は5人兄弟の長男ですし、他の兄弟からもうるさく言われるのですが、父は「遺言状など書くのは死期が近いようでイヤ」と言って、一向に書こうとしません。そのくせ私に「一番世話になったからお前に一番財産を残してやる」とか言うのです。
そこで最後の手段として、イヤな話ではありますが、臨終の場で口頭で遺言を残してもらうしかないと考えています。
知人からは、遺言状がなくても、臨終の際に残した遺言は、何人かの証人がいれば効力がある、と聞きました。具体的にはどのような条件が必要なのでしょうか。
相談者: 大阪府にお住まいの男性(53才)
お尋ねの遺言は一般危急時遺言(民法976条)と呼ばれているものです。その成立要件は、(1)遺言しようとする者が死亡の危急に迫っていること、(2)証人が3人以上立合うこと、(3)遺言者が遺言の趣旨を証人の一人に口授すること、(4)ロ授を受けた証人がこれを筆記すること、(5)口授を受けた証人が筆記した内容を遺言者及び他の証人に読み聞かせ、各証人が筆記の正確なことを承認すること、(6)各証人が署名押印すること、(7)遺言の日から20日以内にその遺言書を家庭裁判所に提出して確認を得る、ことです。
(2)の要件について証人となれない者が民法974条に規定されているので注意すること。(3)の要件中「ロ授」とは口で言葉を話して相手方に伝えその言葉どおり記憶させることをいう。遺言者が全く言語を発すことができなければ口授は成立しません。
(6)の要件の署名は自署が必要です。印は三文判でも拇印でも結構です。
出典: 土曜日の人生相談(2000年4月29日放送分)
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