内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 夫婦の財産関係 】

夫の借金返済は妻に義務有り?
夫婦の連帯責任についてお聞きします。
私は職場の男性と3年前に結婚し、専業主婦をしていました。ところが、先月自宅にかかってきた借金返済の催促電話を私がとったことから、夫に多額の借金があることがわかったのです。実は夫はかなりのギャンブル好きで、その資金は高利の金融会社から借りており、積もり積もって300万円以上になっていたのです。夫を問い詰めたところ白状したのですが、情けないことに翌日失踪してしまい、現在は所在不明です。
借金の返済を催促する電話はそれからも頻繁にかかってきており、相手は夫の失踪を知ると、「夫婦には連帯責任というものがある」と言って、私に「代わりに返済しろ」と迫るのです。
夫の両親に相談しようとも考えたのですが、年老いた義父と義母に心配をかけるのも可哀相なので困っています。この夫の借金は私が代わりに返済しないといけないのでしょうか。
相談者: 兵庫県にお住まいの女性(29才)
結論から言いますと、妻といえども夫の借金を代わりに返済する義務はありません。確かに民法761条に「日常の家事による債務」については、連帯責任を負うという規定があります。しかし、この日常家事債務というのは、日常の家事に関して生じた債務ですから、たとえば米代ですとか、石油代金などを掛売りで購入した場合の債務を指します。ですから、夫の借金すべてに妻が自動的に連帯責任を負うわけではありません。ご質問の場合、夫がギャンブルのために借りたようですから、日常家事債務にはあてはまりません。
また、個別に妻が夫の連帯保証人になることはありますが、その場合は連帯責任が生じます。逆にいうと、連帯保証人になっていれば、赤の他人であっても連帯責任がありますし、連帯保証人になっていなければ、妻、親、子といえども連帯責任がないわけです。
なお、連帯保証人になるのは連帯保証契約ですから、連帯保証人になることを事前に承知して承諾していなければなりません。ですから、たとえば夫が連帯保証人欄に勝手に妻の名前を書いて判を押していたとしても、それによって妻が連帯保証人になることはありません。もし、債権者が連帯保証人になっていると言ってきたとしたら、契約書を見せてもらい、自分の字ではないから知らないとはっきりと拒絶してください。ただ、気をつけていただきたいのは、事後的にせよ、自分は連帯保証人になった覚えはないのだけれど、債権者に執拗に言われて、「では私が代わって払います。」と言ってしまった場合は、追認や債務引受になってしまい、支払義務が生じることがあるので、弁済する気持ちがない場合ははっきりと断ってください。
貸金業を行うためには、貸金業規制法による登録が必要です。もしも、悪質な取立を受けた場合には、その業者が登録している都道府県の金融課などの担当部署に苦情を申し立てることが有効です。
また、弁護士会や各自治体の法律相談を利用したり、暴行・脅迫を伴った取立ての場合は警察に相談されるとよいでしょう。
出典: 土曜日の人生相談(2000年4月22日放送分)
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