内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 法的規制 】

住宅品質確保促進法って何?
分譲住宅の購入についてお聞きします。
我が家は結婚以来十数年賃貸アパートに暮らしているのですが、この低金利の時代、夫との協議の末に、いよいよ分譲住宅を購入しようか、と考えています。
いろいろと資料を集めて、新築、中古、一戸建て、マンションなど、どのタイプがいいか検討を始めたのですが、たまたま電話で話を聞いた不動産会社で「住宅品質確保促進法」という法律のことを聞きました。この春から施行される新しい法律で、住宅を買って住み始める人にとっては有利な法律らしいのですが、初めて聞く名前で詳しいことがわかりません。
この「住宅品質確保促進法」についての詳しいことを、またこの法律が施行された後、どんなことに気をつければいいのか教えてください。
相談者: 兵庫県にお住まいの女性(38才)
第1 住宅品質確保促進法で何が決められたか。
1.去年(平成11年)の6月に住宅品質確保促進法が成立し、今日4月1日から施行されることになりました。分譲住宅の購入を考えておられる御相談者の方にとっても、知っていて損のない法律です。
2.この法律が新しく決めた主な事柄は次のような点です。
(1)住宅の性能に関する表示や評価の方法について共通のルール・基準を作ることにしました[日本住宅性能表示基準、評価方法基準]
(2)新築住宅の性能について公正に評価する第三者機関が作られるこことになりました[指定住宅性能評価機関〕。
(3)新築住宅の基礎的な部分の欠陥については、業者に最低10年間保証させることにしました[瑕疵担保責任の特例]。
(4)(2)の性能評価を受けた住宅に纏わる紛争について、裁判によらないで簡易迅速に解決できるような紛争処理機関が設けられることになりました[指定住宅紛争処理機関]。
第2 新制度の意味合い(その1、上記(1)について)
1.「住宅を買う」ということは、正に一生に1度有るか無いかの一大事です。住宅展示場を御覧になったり、業者の説明をお聞きになったりして夢を膨らませ、他面、予算・土地や建物の広さ・間取り・内装や外観のイメージ、或はメーカーや分譲業者のイメージ等で購入を決断しておられませんか。従来、住宅購入に際して、住宅の基本性能については、余り検討が加えて来られなかったのが実情のようです。住宅ができ上がってしまいますと、住宅の屋台骨を形作っている部分は建物の外からも、室内からも見えませんので、建築の素人には、判断が付けにくいのですね。
その結果、欠陥住宅を掴まされ、持ち家の夢から、一転、絶望の淵に陥れられたと言うケースが、現に何件もありました。
2.その大きな原因の一つに、住宅の基本性能について公正な統一的基準項目が決められていなかったため各業者が夫々勝手に項目を設けて宣伝広告しており、購入者が、客観的に比較検討することが極めて困難だったという事情が有りました。
3.そこで、今度の法律によって、構造耐力(建物の頑丈性)、遮音性(音を遮る程度)、耐火性(火災・延焼に対する強さ)、省エネルギー性能などの基本的な性能について、「性能項目」と「評価方法の基準」を決めることにしたのです。
これによって、住宅を買おうとする人は、分譲される住宅の基本的性能についての比較検討がやり易くなるわけです。
第3 新制度の意味合い(その2、上記(2)について)
1.このように共通の「性能項目」と「評価方法の基準」が作られただけではなく、新築される住宅が、そういった基準に適合していることを客観的に認定してくれる第三者機関が作られることになりました。この第三者機関は、建設大臣が指定することになっており、「指定住宅性能評価機関」と呼ばれます。
2.住宅を新築する場合に、施主や、施工業者・分譲業者が、この「指定住宅性能評価機関」に審査をしてもらって、この審査をパスしますと「性能評価書」を発行してもらえます(この審査には、設計段階の検査と施工段階の審査とが有ります)。
3.審査をパスした場合の「評価書」は、当該新築住宅が優良住宅であるというお墨付、一種の「マル適マーク」のような機能を持つことになると考えられています。
第4 (以上を購入者の立場から見ると)
1.今後、住宅の宣伝、広告には、新しい「日本住宅性能表示基準」に則った表示が広がって行くことが予想されますので、住宅の基本性能について比較検討することがやり易くなるでしょう。しかし、住宅性能についてこれ以外の表示をしてはならないという程の拘束力は有りませんので、そのような業者との取引に際しては、当該住宅の基本性能について、くれぐれも良く話を聞くようにして下さい。
今度決められた評価基準以外の基準を表示する場合に、「日本住宅性能表示基準」という名称と紛らわしい名称を使うことは禁止されています。ですから分譲住宅の広告等で、例えば「大日本住宅性能表示基準」というような表示は禁じられます。このように紛らわしい表示をしている業者との取引は、避ける方が賢明ではないでしょうか。
2.また「指定住宅性能評価機関の審査」を受けることも、強制されるわけでは有りません。そして、この審査を受ける為には若干の費用が掛ります。
「指定住宅性能評価機関」以外の者が、この「住宅性能評価書」等にマークを表示したり、紛らわしいマークを使用することも禁じられています。
3.「住宅性能評価書」の無い物件にも、きっちりした物件が有りましょうが、この評価書のある住宅は、一定の基準を満たしていることが認定されているという評価が出来ます。そして、この評価書若しくはその写しが、新築住宅の売買契約書に添付されますと、原則として、評価書に表示された性能を有する新築住宅を引き渡すことを契約内容にしていると看做されます。
その分、安心して取引できる物件といえるでしょう。
第5 新制度の意味合い(その3、上記(3)について)
1.工務店に頼んで住宅を建てたり、分譲住宅を買った場合に、数年後に、それまで見えなかった部分(基礎の部分等)に欠陥が見つかる事例があります。このような場合の修理については、これまで、契約書の特約によって、1年とか2年という短い期間しか保証されていない事例が少なからず見られました(発見が、新築から数年後ですと、修理に費用が別途掛かってきました)。
2.今度の法律で、住宅の基本的な部分についての欠陥については、新築完成引渡から10年間、保証させることにしました。
3.住宅の基本的な部分というのは「構造耐力上主要な部分、または、雨水の侵入を防止する部分」とされており、具体的には「基礎、床、柱、屋根、外壁」等の欠陥によって建物の耐力や雨水侵入防止に影響のある場台のことです。
こういった欠陥(法津の用語では「瑕疵(かし)」と言っております)については、完成引渡から10年間、修理要求や損害賠償請求が出来ることになりました。契約の特約で、これより短い期間を決めても、そのような特約は効力が認められません。
第6 新制度の適用範囲
1.新しい法律による、施主や買主を保護する規定は「新築住宅」について適用されるものです。
ご相談者は、中古住宅にするか、新築住宅にするかは、まだ決めておられないようですが、新しい保護制度は、中古住宅については適用されません。
2.「新築」住宅といいますのは、新たに建築請負されたり、新たに建築された建売の住宅ですが、例えば「建売住宅で、暫く売れなかった物でも、工事完了の日から1年以内のもの」であれば、新築住宅として扱われます。
逆に、工事完了から1年未満でも、一旦、人が居住してしまいますと、その後の住宅の売買に関しては新築住宅の扱いは受けません。
出典: 土曜日の人生相談(2000年4月1日放送分)
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