内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 時効 】

友人に貸した金は、10年経てば返さなくて良い?
借金返済の時効についてお聞きします。
私は6年前に、当時勤めていた会社の同僚OLに頼まれて、彼女に現金30万円を貸しました。返済の方は、不定期ながら顔を合わせるたびに少しずつ返してもらっていました。
ところがその後私は職場のトラブルで会社を辞めてしまい、彼女に会う機会がなくなるとともに、返済もされなくなり、結局20万円は返してもらえないままになってしまったのです。
辞めた会社に顔も出しづらいため、そのうちどこかで出会ったときにでも催促しようと、そのままになっていたのですが、最近知人から「5年間取り立てずにいたら、借金は時効になり取り立ては不可能になる」と聞きました。もしその通りなら、間もなく5年になるので、やはり思い切って催促した方がいいのか悩んでいます。また、キチンとした借用書などもないので、相手が返済をしぶったときにどうすればいいのか心配です。
そこで質問なのですが借金の返済には5年という時効期間があるのでしょうか。借金返済を催促するのに良い方法はないでしようか。
相談者: 大阪府にお住まいの36才の女性
民法や商法には、時効という制度があり、長期間請求しないと権利を行使できなくなりますが、あなたの場合は5年ではなく10年です。
時効には、消滅時効と取得時効があります。消滅時効とは、権利があっても行使せずに一定の期間を経過すれば、その権利が消滅するという制度です。取得時効とは、消滅時効とは逆に、本来権利がないはずのものでも、一定の期間、権利があるかのような状態が続けば、法的に権利として認めるという制度で、20年間他人のものを占有したものは所有権を取得する(民法162条)という規定がその代表です。
今回は、消滅時効について説明しますが、この消滅時効は、権利の種類によって期間が違うので注意してください。一番短いのが、例えば、料理店の飲食料であり、ツケで飲んだ場合、1年間支払わず、催促もされなければ、消滅時効にかかってしまいます。本問のような貸金債権の場合、民法によれば、消滅時効の期間は10年です。ただし、貸金業者が金を貸す場合には、商売としてやっているので商法の適用があり、5年で消滅時効にかかります。本問の場合は友人だから貸したのであり、商売でやっているわけではないので民法が適用され、消滅時効の期間は10年です。
本問では、貸したのは6年前ということなので、まだ、消滅時効にはかかっていません。ただし、今後催促もせず放っておいて、10年が経過すると、消滅時効にかかります。ただし、時効には「中断」という制度があり、中断があると、その時点から改めて時効期間をカウントすることになっています。したがって、例えば今年の3月1日に時効の中断があれば、そこから10年は消滅時効にかからないということになります。
時効を中断する方法ですが、とりあえず内容証明を相手方に送るという方法をとるのが一般です。内容証明が相手方に到達すれば、時効を中断することができます。ただしこの中断は、6ヵ月以内に、正式な裁判を起こさなければ中断したことになりません。ただし、内容証明で請求して、相手方が債務の一部を弁済したり、「もう少し支払いを待ってほしい」というように、承認をした場合、それらも時効の中断の事由となっていますので、時効は中断します。また、内容証明が送られると、受け取った方は真剣に考えることが多いので、返済の催促という意味もあります。それでも、支払わなければ、公正証書を作成するか、裁判をするしかないでしょう。
出典: 土曜日の人生相談(2000年2月12日放送分)
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