内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 財産分与 】

「関空離婚」さて、財産分与はどうする?
息子の離婚についてお聞きします。
28才の息子は先日結婚し、ヨーロッパへ新婚旅行に出かけました。ところが2人は日本へ帰ってくるなり、離婚すると言い出したのです。どうも旅行中にお互いのイヤな部分が見えてきて、すっかり熱が冷めてしまったようなのです。
息子も嫁もまだまだ未熟で甘えが抜けず、成田離婚ならぬ関空離婚で、親としては恥ずかしい限りですが、こじれたままで夫婦生活が続くわけもないので、離婚させようと思います。
そこで、離婚の条件なのですが、こういった事情なので、慰謝料の支払いなどもなく、財産分けなども必要ないと思っていました。ところが、嫁は新婚旅行中にブランド店などでかなりの買い物をしたようで、それらの品物は、夫婦になってからの財産なので、分与の対象になるから、取り分を寄越せと言ってきたのです。息子に聞くと品物の代金はほとんど息子が払っていたようです。これらの品物を取られてしまうのは納得がいかないのですが、財産の分与分は渡さなくてはいけないのでしょうか?
相談者: 大阪府にお住まいの57才の女性
まず離婚に伴う財産分与は民法768条に定められていますが、これは結婚中夫婦が協力して形成した財産を清算することを目的とし、最高裁判例はその立法趣旨として「離婚における財産分与は夫婦が婚姻中に有していた実質上の共同財産を清算分配するとともに、離婚後における相手方の生活の維持に資することにある」と述べています。
そして婚姻中の財産は大別すると次の3つに分けることができます。
(1)特有財産
名実共に夫婦それぞれの所有のもの、婚姻前から各自が所有していたもの、婚姻中に一方が相続したり贈与を受けたものや社会通念上各自の専用品とみられるもの。
(2)共有財産
名実共に夫婦の共有に属するもの。夫婦が合意で共有とし共有名義で取得した財産、共同生活に必要な家財・家具等はこれに当たる。
(3)実質的共有財産
名義は夫婦の一方に属するが、実質的には2人の共有に属するとなすべきもの、婚姻中に夫婦が協力して取得した財産で一方の名義になっているものがこれに当たる。
本件の様な新婚旅行中に購入された物は(2)や(3)には該当しないと思います。実質的に考えても前述の最高裁判例の趣旨に合致しません。ではどちらか一方の所有物だとすると夫と妻のどちらでしょうか。
購入自体は妻が主体的に行い買い主になっているようですが、実質は夫がその婚姻前から有していた金員により購入されており、夫が実際の買い主で所有者といえるでしょう。
よって本件の場合は財産分与の対象とならず、夫は所有権を主張して引渡しを拒めるものと思います。
出典: 土曜日の人生相談(1999年12月18日放送分)
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