内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 ペット 】

ペットに驚いた通行人がケガ。さてどうする?
ペットによるケガの補償について伺います。
我が家では柴犬をペットとして飼っています。家の前を見知らぬ人が通ると吠えるので、多少やかましいかなと思うものの、番犬として役に立っているので喜んでいました。
ところが、先日ご近所に引っ越してきた家のご主人が散歩で我が家の前を通りかかったときも犬が吠えたのです。そのご主人は驚いて、バランスを崩して転倒し、全治2週間の打撲傷を負ってしまいました。
事態を知ってすぐ菓子折りを持って先方に出向き、治療費もお払いするから、と謝りました。ところが相手は大変に怒っており「治療費も払ってもらうが、あんな犬がいては安心して暮らせない。処分して欲しい」と言うのです。
確かにケガの原因となったのは我が家の犬ですが、直接襲ったわけでもありませんし、「処分しろ」というのは言い過ぎだと思うのです。犬の飼い主として管理責任上、治療費は負担する義務があると思うのですが、犬も処分しなければならないのでしようか?
相談者: 奈良県にお住まいの53才の女性
民法718条第1項に「動物の占有者はその動物が他人に加えたる損害を賠償する責に任ず。但し、動物の種類及び性質に従い相当の注意を以ってその保管をなしたるときはこの限りにあらず。」としています。ですから、ご質問者の場合、家の前にわかるように「犬が吠えるので注意!」などと書いて貼っておくなど相当の注意を払っておればよかったのですが、そうでないならばやはり損害賠償責任は免れません。
そして、損害賠償の範囲としては、治療費や場合によっては休業保証などが考えられます。しかし、処分までしなければならないかは疑問です。確かに、被害者にしてみればおちおち道を歩けないから何とかしろというのはわかります。しかし、その犬が狂犬病に罹患している場合や、人を襲う癖があるなど、処分するほかに方法がなければ別ですが、道と反対側に犬小屋を置くとか、口輪をはめるとかの措置を講ずれば、ある程度は防げることを考えると、処分まで要求するのは、行き過ぎであると思われます。もっともこれでは番犬の用をなさなくなるかもしれませんが、都会で生活する以上お互いそれぞれ少しずつ譲り合うことが必要です。
なお、「動物の保護及び管理に関する法律」というのがあって、その第2条で「何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。」と定めらており、第4条1項で、「動物の所有者又は占有者は、その動物を適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない。」としています。
ちなみに、犬や猫は保護動物とされており、虐待し、又は遺棄した者は、3万円以下の罰金又は科料に処されます(同法第13条)。
出典: 土曜日の人生相談(1999年12月11日放送分)
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