内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 セクシャルハラスメント 】

派遣先でセクハラにあった場合どうしますか?
セクハラにまつわるトラブルについてお聞きします。
私は人材派遣会社のA社に人材登録しており、そこから派遣されて、大阪市内のB社でパソコンの事務作業をしています。ところが、B社の同じ部署の男性社員から、いやらしいことを聞かれたり、体にさわられたりのセクシャル・ハラスメントを受けて困っているのです。
派遣先の会社を変更してもらいたいと、A社の担当課長に頼んだのですが、会社も人材探しに苦労しているようで、「代わりの人が見つからないので、見つかるまで我慢してほしい。また、あまり騒いでB社と仕事ができなくなると困る。穏便に済ませてほしい」という感じなのです。でも、このままだと私の代わりにB社に派遣される人が同じ被害を受けるかもしれませんし、自分としてはA社の態度に納得できません。
そこで伺いたいのですが、A社が適切な処置をとってくれない場合、契約先のB社に対して、社員の行為についての苦情を訴えてもいいのでしょうか。あるいはこういうときに相談できる窓口などがあるのでしょうか。教えてください。
相談者: 兵庫県在住の女性(30才)
人材派遣会社のA社は、その雇用する派遣労働者の労働環境の安全等について適正化されるよう努めるいわゆる安全配慮義務というものがあり、これに違反して派遣労働者に損害等を発生させた場合、その損害賠償責任が生じます。
本件の場合ですと、相談者がA社の担当課長に派遣先の労働条件の改善を申し入れているのですからA社も派遣先におけるセクハラの有無について調査し、もしセクハラがあればそれを改善するようB社に申し入れる等の措置をとる必要があります。
次にB社に対する苦情については、結論からいうと苦情を訴えることは可能です。これは法律に規定があり、人材派遣法(正確には労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律)第40条では「派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者から当該派遣就業に関し、苦情の申出を受けたときは、当該苦情の内容を当該派遺元事業主に通知するとともに、当該派遣元事業主との密接な連携の下に、誠意をもって、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければならない。」と定めています。従って、派遣先に対しても苦情を訴え、労働環境の改善を求める権利があります。もしB社がこの訴えに応じない場合はどうなるでしょうか。セクハラを行うB社の男性社員の行為は民法上不法行為に該当し、相談者は当然この男性社貝に対しセクハラで受けた精神的苦痛についての慰謝料を請求することは可能です。またB社もこの男性社員の雇い主としての使用者責任及び職場の環境を整備する法的義務があり、男性社員と同様損害賠償の責任があります。従って、相談者がA社B社に訴えてのセクハラが止まらない場合はA社B社及び男性社員に対し損害賠償訴訟を提起することができます。ただし3名を訴えることができても損害賠償を3倍とれるものではありません。
なお、セクハラを受けた場合の相談窓口として大阪弁護士会のセクハラ110番を実施しています。
出典: 土曜日の人生相談(2001年6月23日放送分)
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