内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 新法解説 】

夫がフリーマーケットで掘り出した壺は「アヘン吸引用の器具」かも。持っているだけで罪になる?
おかしな話ですが、相談にのってください。
私の主人は古い変わったモノを集めるのが趣味で、古道具屋さんやデパートの古道具市などに足を運んでは、怪しげな古いモノを買って悦に入っています。私はいつも小言を言うのですが、本人はすました顔です。
この間、その主人が、街で偶然覗いたフリーマーケットで変わったモノを見つけて買って帰ってきました。それは中国産らしい奇妙な器具で、美しい装飾の施された金属製の管が複雑に入り組んだ壷のようなモノでした。主人もそれが何か知らなかったのですが、装飾が美しく、きっと値打ち物だと思ったそうです。ところが知人がその壷を見て「これは阿片吸引用の器具だ」と言い、「持っているだけでも罪になるから、気をつけた方がいい」と忠告してくれました。私はびっくりして、手放した方がいいと主人に言ったのですが主人は「珍しいモノだから持っておきたい」と言うのです。
そこで質問なのですが、この壷が本当に阿片吸引用のものだったら、持っているだけで本当に罪になるのでしょうか。知らずに買ったとはいえ、やっぱり手放した方がいいのでしょうか。
相談者: 京都府にお住まいの64才の女性
1.奥さんの心配されているように、ご主人が骨董品として購入された品物が、「あへん吸引用の器具」とすれば、罪になる可能性があります。
2.刑法という法律では、「あへん煙を吸引するための器具を、輸入したり、製造したり、販売したり、又は販売の目的で所持すれば」犯罪となります。(刑法137条)
ご主人の場合、「珍しい物だから持っていたい」とのことですので、他人に販売するつもりはないことから、これには該当しないことになります。
3.しかし、刑法140条では「あへん煙を吸引するための器具を所持している者は、1年以下の懲役に処する」と定められています。
これは、販売のため以外でも、器具を所持する場合を処罰する規定です。
従って、たとえ販売の目的でなく、単に鑑賞用であっても刑法140条に該当し、処罰される可能性があります。
4.ご主人は、購入された時点では、この品物があへん煙吸引用の器具であることを知らなかったのですから、そのまま知らずに持っている場合であれば、処罰されることはありません。しかし、知人からの「あへん煙の吸引用の器具」という忠告があったにもかかわらず、「珍しい物だから、持っていたい」というのですから、その品物が「あへん煙吸引用の器具」であっても、所持したいということになります。
そうすると、その品物が本当に「あへん煙吸引用の器具」の場合、ご主人は「あへん煙吸引用の器具」を所持していたとして、刑法140条に該当することになります。
このまま所持され、後日警察に発覚した場合でも、ご主人の取得した経緯から現実に処罰を受けることはないと思われますが、被疑者として逮捕、取り調べを受ける等きついお灸をすえられることになります。
5.そこで、どうすればいいかですが、
(1)その品物を警察に持って行き、調べてもらってください。
「あへん煙吸引用の器具」ということであれば、警察に提供してその品物を放棄することになります。この場合、取得の事情について、警察で説明をすることになります。そうでないと判れば、返してもらい末永く大事にしてください。
(2)その品物を、自分で廃棄することも考えられえますが、これで問題が完全になくなったことにはなりませんので、(1)の方法をとってください。
(3)なお、決してその品物を、第三者に売ったり、譲ったりはしないでください。
罪が重くなります。
出典: 土曜日の人生相談(1999年10月9日放送分)
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