内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 相隣関係 】

近所の裏庭でゴミを燃やされ大迷惑。損害賠償は請求できる?
「ご近所とのトラブル」の件でこ相談します。
我が家の裏手の家では、最近裏庭に家庭用のゴミ焼却炉を設置し、2、3日に1度の割合で、ゴミを燃やすようになりました。ゴミ処理に気をつかっておられるのはわかるのですが、我が家の方に煙が流れてくる上に、ゴミが燃えたススが飛んできて、洗濯物が汚れてしまうので困っています。
何度か注意してもらうように、お願いに行ったのですが、「分かりました。気をつけます」と言われるものの改善される様子はありません。
風向きの加減なのか、被害を受けているのは我が家だけのようで、ご近所に相談しても、真剣に取り合ってもらえず、どうやら私たちだけで解決しなければならないようです。
この家の人に損害賠償を請求し、今後、このような迷惑を受けないようにする手だてはないでしょうか。
相談者: 京都府にお住まいの56才の女性
近隣でのトラブルを法的に解決するのは、なかなか困難な場合が多いようです。
隣でゴミを焼かれると、特に住宅密集地では臭いや煤で近隣にご迷惑を掛けることになります。
他方、ゴミを焼く側にとっては、自宅敷地内で行っていることに文句を付けられるいわれはないということにもなります。
しかし、いくら自宅敷地内でゴミを焼いているからといって、無制限に許容されるものではありません。
昔、大正時代の判例ですが、汽車の煤煙で沿線の有名な松が枯死したことについて、汽車の運行を行っていた国に損害賠償責任が認められた例があります(武田信玄公が笠を掛けた松ということで「信玄公笠掛け松事件」といわれています)。
そして、この事件で裁判所は、権利の行使が社会通念上被害者において許容することができないものと一般に認められる限度を超えた場合には、不法行為(民法709条)になると判断しています。この社会通念上、辛抱しなければならない限度のことを「受忍限度」といっていますが、仮にゴミを燃やすのが自宅敷地内であったとしても、近隣の人たちの受忍限度を超えるような態様でのゴミの燃やし方をすれば、不法行為を構成し、慰謝料程度の損害賠償請求が認められる可能性もあるでしょう。
しかし、そうはいっても近隣のこと。あまり厳しく法律を振りかざして対応することも望ましいとは言えません。
できるだけ穏やかに話し合いを重ねて行くべきでしょう。しかし、どうしてもそれで改善されない場合には、簡易裁判所に調停を申し立てるのも1つの方法です。
そして、調停の中で、ゴミの燃やし方などについて近隣に迷惑がかからない方法を約束してもらうなどの話し合いを行ってはいかがでしょうか。
出典: 土曜日の人生相談(1999年7月24日放送分)
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