内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 婚姻 】

離婚後、元の舅と結婚できるか
「結婚」のことでご相談します。
私は、2年間の結婚生活の末、先月離婚しました。年下の夫は異常に独占欲が強く、私が働くことを嫌がったりして、結婚生活が続かなかったのです。
夫はお義母さんを早くに亡くしており、お義父さんが男手ひとつで育ててきました。話し合いの際には、離婚をいやがる夫といろいろともめたのですが、お義父さんが間に入って私の相談にも乗ってくれたりしました。お義父さんは本当に良い人で「君には苦労をかけて申し訳ない」としきりに私に気を遣ってくれたりしたのです。
そこでご相談したいんですが、実は私は夫よりもお義父さんの方が好きになってしまったようなのです。夫と離婚した後に、その夫の父親と再婚すると言うことは果たして可能なのでしょうか?
相談者: 岡山県にお住まいの28才の女性
1.残念ながら、あなたは義理のお父さんと結婚することは認められません。勿論、あなたは離婚してからと考えられているのですから、義理のお父さんではなくなっているわけですが、この場合でも日本の法律は結婚を許していません(民法735条)。
2.なぜこういった場合に結婚が許されないかというと、倫理上の理由とされています。結婚についての事柄は、民法で定められています。
現在の民法は、第二次世界大戦が終わって、新憲法が施行された後の昭和23年、新憲法の趣旨に従って明治民法が改正されたもので、当時の倫理観に沿って立法がされています。その後、民法も多々改正されましたが、直系姻族間の婚姻禁止条項は、まだ残っています。女性の再婚を離婚後6ヶ月の経過を条件とする規定などは、立法論としては随分批判されていますが、この規定もまだ改正されてはいません。
3.さて、ご質問の場合の直系姻族間の婚姻禁止ですが、あなたからみて、元の夫の父親は直系姻族にあたります。
「直系」といいますのは、親一子一孫といった血のつながりがある親族のことです。「姻族」といいますのは、結婚した場合に生じる関係で、あなたと元の夫の血族との関係や、元の夫とあなたの血族との関係を言います。
そして、直系姻族間では、姻族関係のある間はもちろんですが、姻族関係が消滅した後も結婚はできません。
姻族関係は、結婚によって生じる親族関係ですから、離婚すれば姻族関係も当然無くなります。ですから、あなたが離婚した以上、あなたと夫は配偶者の関係でなくなるだけでなく、あなたと夫の父親との間の姻族関係も無くなるのです。そうしたら、あなたと夫の親との結婚もできることになりますが、これは倫理上適当ではないと立法者が考えたために、婚姻解消によって姻族関係がなくなった後も、婚姻を禁止する規定をわざわざ置いたのです。
この規定は、民法735条に定められているのですが、この1つ前の734条は、直系血族間(親と子など)の婚姻禁止規定ですし、ひとつ後の736条は養親子関係(養親と養子など)間の婚姻禁止規定です。
4.そこで、直系姻族間の婚姻を禁止した倫理的意味ですが、これは親子に近い者(類似する者)が婚姻をするのは、親子秩序の侵害、また性秩序の侵害だとみています。従って、そのような関係にあった者がいくら姻族関係が終了した後といってもの、親子秩序また性秩序の侵害はそう変わっていないと立法者はみたのでしょう。
5.これに対し、考え方として婚姻自由の原則、配偶者選択自由の原則(憲法24条)から、姻族関係消滅後における婚姻禁止は、立法論として妥当性を欠くという批判があることを付け加えておきます。
出典: 土曜日の人生相談(1999年6月12日放送分)
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