内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 慰謝料 】

不倫関係の破綻と慰謝料
「慰謝料」のことでご相談します。
私は27才で独身のOLです。2年前から、妻子のいる職場の上司と不倫関係にありました。その上司はいつも「妻とボクの間は冷え切っている。そのうちに離婚する」と言うので、私はその言葉を信じてつき合っていたのです。
ところが、いつまで待っても彼は離婚する様子がありません。そこで先日「いつになったら離婚して私と結婚してくれるの?」と問い詰めたところ、なんと彼は「やっぱり家庭は捨てられない」などと言うのです。
私は愕然として彼と別れる決心をしました。彼はひたすら「すまなかった」とあやまるのですが、私を長い間だましてきた彼を許すことができません。
私の精神的苦痛に対して慰謝料を請求したいと思うのですがどうすれば良いのでしょうか?慰謝料を請求することはできるのでしょうか?
相談者: 兵庫県下にお住まいの27才の女性
1.大阪弁護士会の公式見解ではなく、回答文作成担当弁護士の個人的見解としては、慰謝料請求はすべきでない、と思います。
2.「今の妻と離婚してあなたと結婚する」という言葉を信じて男女関係に進んだのに、離婚してくれないのでだまされた、と感じておられる訳ですね。しかし離婚は相手のある話で、あなたがつきあった男性1人でできるものではありません。現に、離婚したくても相手が応じてくれない、というので家庭裁判所に調停を申し立て、決着がつかずに裁判所で裁判を起し(人事訴訟法2条)、それでも離婚が認められない、というケースは決して稀ではありません。
3.あなたにすれば、たとえ離婚できないにせよ、離婚するための努力さえしなかったことが許せない、というお気持ちもあろうかと思います。しかし離婚するための努力をしなかったことに責任を認めて慰謝料を支払え、というのでは、離婚するために努力することを、裁判所が後押しするのと同じ結果になりますから、裁判所としてはそのような判断をしにくいと思います。法律の建前は、あくまで婚姻関係の尊重ということですから。
又裁判になったとき、相手の男性から、離婚するための努力はしたけれども、結局離婚できなかったのだ、と言われれば、いや努力をしていない、とあなたの方で立証するのはむずかしいでしょう。
4.くれぐれも注意して欲しいのは、あなたは、相手の男性の妻から慰謝料を請求されかねない立場にある、ということです。
夫婦はそれぞれ不倫してはならないという義務、法律用語では貞操義務を負っています。相手の男性がこの貞操義務に違反したことにより、自分の妻に対して慰謝料の支払義務を負うことは当然ですが、あなたはその男性が既婚者だと知って不倫関係を続けた訳ですから、共同不法行為者となり、相手の男性と連帯して、その男性の奥さんに慰謝料を支払わなければならないことになります。
相手の男性の奥さんは、この慰謝料請求をするのに、その男性と離婚している必要はありません。
5.この回答にはご不満があろうかと思いますが、もっとシンプルなケースとして、相手の男性が独身の場合を考えてみて下さい。独身の男性が、あなたと結婚したいと言い、あなたもその気になって男女関係になったが、結局結婚してくれなかったという場合です。
この場合でも、「婚約」があったと認められなければ、慰謝料の請求は難しいのです。
出典: 土曜日の人生相談(1999年5月15日放送分)
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