内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 賃料不払 】

借家人が賃料を滞納した場合の対処法
アパートの店子への明け渡し要求についてお聞きします。
私は自宅の庭に、4戸分の住居が入ったハイツ型アパートを建て、その家賃収入で生計を立てています。
そこに若い夫婦が入居しているのですが、いつも家賃の支払が遅れているのです。この4月になっても昨年12月分以降が払われておらず、催促しても「泥棒に遭ってお金がない」とか「実家の修繕費用を払ったのでお金がない」とか見え透いた言い訳をするのです。
それだけでなく、住まいの設備の扱いも乱暴で、ガス管や風呂釜など度々故障し、修理費用はすべて私が負担しています。
また契約書には禁止されている犬を飼ったり、他人のスペースまで自分たちの自転車やバイクを置いたり、わがままのし放題なのです。
そこで伺いたいのですが、こういう店子に強制的に出ていってもらうには、どうすればいいのでしょうか。先方は「居住権」があると言って大きな顔をしているのですが、ほかの住人にも迷惑ですし、何とかしたいのです。
相談者: 兵庫県在住の女性(72才)
1.あなたが店子と結んでいる契約はいわゆる借家の賃貸借契約ですが、この契約は売買のように1回限りのものではなく継続的な契約ですから、契約事項に違反する事実があれば直ちに契約を解除(強制的に終了させる)することができるとは限らないのです。賃貸借契約はお互いの信頼関係の上に成り立っていますので、この信頼関係を裏切ったという場合にはじめて契約の解除が出来ることになるのです。
2.本件では賃料の不払があるのですから、契約違反があることは明らかです。
それも1ヶ月分というのではなく既に4ヵ月分滞納があり、しかも滞納は今回がはじめてではないようです。そして賃料不払の理由が例えば一家の大黒柱が交通事故に遭って大怪我をしたため収入が途絶えたというような賃借人にとってやむを得ないような事情もないようです。
従って、このような場合はさすがに賃貸人と賃借人の間の信頼関係が破綻したものとして契約の解除が出来ると考えていいでしょう。
3.本件では賃料不払だけでなく、その他にも問題があるようです。
まず、備え付けてある設備の使用方法について契約にいちいち規定がなくても、通常の用法に従うという注意義務があるのですから、賃借人はこれに違反していることになります。また、犬を飼うことを禁止しているのですからその点でも契約違反があります。さらに他人のスペースにまで自分達の自転車やバイクを置くというのも仮に契約条項になくても信義則上近隣に迷惑をかけてはならないという義務に達反しています。
4.結局この店子は賃料不払だけではなく、3.で述べたような種々の契約違反があるので、店子との信頼関係は完全に破壊されたものと見て、契約を解除することが出来ます。
5.契約を解除する場合は、賃料支払いの期限を定めて、その期間内に賃料を支払わなければ契約を解除しますという文書を内容証明郵便で郵送するのが通常のやり方です。しかし本件のように期間内の賃料不払いがあるだけでなく、その他の契約違反も重なっているようなケースではいわゆる無催告解除、すなわち何ら期限を定めることなくいきなり解除(すぐ出て行ってくれと要求すること)することも検討する余地はあります。
出典: 土曜日の人生相談(2001年5月5日放送分)
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