内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 増改築 】

借家の修繕義務の所在
家のことでご相談します。
半年ほど前から一戸建ての賃貸住宅に住んでいます。大家さんは近所に住む一人暮らしのおばあちゃんで、知人の紹介で知り合って家を借りることになったのです。
家は築後20年以上経っており、かなり傷んでいましたがその分家賃も安くしてくれるとのことだったので、不動産業者を通さずに直接借りることにしました。もちろん契約書などはありません。
暮らし始めてしばらくは、問題はありませんでした。ところが、最近寒くなるにしたがって、すきま風や雨漏り、建て付けの悪さなとが気になってきました。この間などはおもての土壁の一部が崩れ落ちたりしたのです。
大家さんに「修理して欲しい」と言おうかとも思いましたが、安い家賃で借りている上に、おばあちゃんに強いことも言えない雰囲気です。やはり家の修繕費用などは自分で持たなければならないのでしょうか?
相談者: 徳島県にお住まいの42才の女性
建物の賃貸借契約の場合、家主には、賃貸建物を通常の使用に耐える状態で貸す義務(居住できる状態にしておく義務)が負わされています。家主が賃料を取り、収益を挙げていることの対価として、家主には右のような義務が課せられているのです。
従って、目的となっている建物に雨漏りが生じたり、すきま風が吹き込んだりするような状況は、通常の使用に耐える状況にはないといえますので、賃借人は、家主に対し修繕を請求することができます。
しかし、ご質問の場合にも右のような原則論が妥当するかどうかは疑問です。
質問者の場合、家主から建物を借りるにあたって当該建物がかなり傷んでいることを承知しており、そのことを理由に賃料を低額にしてもらっているからです。先にも述べましたとおり、家主の修繕義務は、賃料を得て収益をあげていることの対価として認められているのです。従って、収受している賃料額に比べて修繕費用が多額になるような場合には、修繕義務の範囲も制限されると考えられます。また、建物の老朽化が著しく、修繕費用に新築費用相当額を要するような場合には、修繕義務を全面的に免れる可能性もあります。
以上の通り、本件の場合には、具体的な家賃と修繕費用額が不明なので断定できませんが、修繕費用の一部しか家主に負担させられない場合あるいは家主が全面的に修繕義務を免れるといった事態も十分考えられます。
また、修繕義務は、家主の義務ですが、翻って言えば、自分所有の家屋を修繕することは、家主の権利でもあります。従って、修繕が必要な箇所が生じた場合には、借家人は、家主にそのことを告知し、家主側において修繕してもらうよう申し入れる必要があります。その手順を踏まずに借家人側で一方的に修繕を行うと、それが仮に好意で行った場合でも、契約解除を求められたり、必要以上の補修を行ったとして修繕費用を払ってもらえない等、後のトラブルの原因になります。家主に修繕を申し入れても家主側で対応してくれない場合には、後のトラブルを防止するため、予め修繕費用の見積額、工事内容を内容証明郵便で知らせ、その証拠を残しておく等の措置が必要でしょう。
出典: 土曜日の人生相談(1999年1月2日放送分)
戻る