内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 境界問題 】

土地境界線の決め方
土地の境界線の設定にお答えください。
結婚して10余年、賃貸マンション暮らしをしてきましたが、両親も年を取ったため、昨年実家に戻り、両親と同居するようになりました。自宅も、2世帯住宅に改築しようということになり、先日隣家の人にも立ち会ってもらって、測量をしたところ、隣人はこちらが考えていたのと違う境界線を主張し出したのです。驚いて父親に聞くと、この土地は祖父の代から住んでいるもので、隣家との境界はお互い暖昧なままやってきたようなのです。隣家の主人も「うちはここが境界だと長年思ってた」と割とあやふやです。
そこで伺いたいのですが、この際境界を決めて、届け出もキチンとしたいのですが、どのような手続き、段取りを踏めば良いのでしょうか?
相談者: 兵庫県在住の男性(43才)
1.土地の「境界」という場合、(1)個々の土地を区画する公法上の区分線という意味と、(2)所有者を異にする2つの土地がある場合、両所有者の所有権が及ぶ限界線という意味の、2つの意味があります。
2.これら2つの意味の「境界」は、必ずしも一致しません。例えば、A番地の土地を山田さんが、B番地の土地を田中さんが持っていたとして、山田さんが、B番地に接するA番地の土地の半分を田中さんに売ったとします。この場合、A番地とB番地の境界線((1)の意味の境界)は今までどおり変わりませんが、山田さんと田中さんの土地所有権の範囲((2)の意味の境界)は大きく変わっており、両者に不一致が生じるというわけです。
ですから、両方の意味での「境界」を、明確に区別して考える必要があります。
3.まず、(1)の意味での「境界」ですが、一つの地番で示された土地の範囲はどこまでかといったことは、税金を課するときの単位や基準になったりするものですから、これを当事者間で勝手に決めたり、変更したりすることはできません。業者に測量を頼んだりしてもダメで、それによってこの意味での境界は何ら決まるものではありません。極端な例をあげれば、行政上の単位である大阪府と奈良県の県境の線を、県境に接して土地を所有している人達が、合意によって勝手に決めたり、変更したりできないということです。
これをハッキリさせたいという場合、隣地所有者に対して訴訟を提起し、裁判所に公的判断を示してもらうしかありません。これを「境界確定訴訟」といいます。境界確定訴訟は、双方に有力な物的証拠が少なく、鑑定や証人尋問といった手続が必要となり、何年間にもわたって長期化し、なかなか複雑困難な訴訟となることも多いように思います。少なくとも、時間と費用がかかるということについて、覚悟しておくことは必要でしょう。
4.次に、(2)の意味での「境界」ですが、これは当事者間で自由に合意して定めることができ、合意が成立すれば、当事者はこれに拘束されます。ただし、そこで確定されるのは、「土地の公法上の境界がどこか」ということではなくて、あくまでも「お互いの土地所有権がどこまで及んでいるのか」ということだけです。
この意味での「境界」を決めるについては、敢えて裁判をする必要はありません。話し合いがつけば、「甲地と乙地との境界は、別紙図面のイ点とロ点を結ぶ直線である」などといった内容の「境界協定書」を作成しておくのが普通です。
この意味での境界確定は、要するに土地所有権の一部移転(公図と土地所有権の範囲が一致する場合には、現状維持)を意味します。ですから、仮に所有権の一部移転がある場合には、その分だけの土地所有権移転登記の手続を踏んで届け出れば、登記簿上公に、両者の所有地(土地所有権の境目を示せることになります。
出典: 土曜日の人生相談(2001年3月24日放送分)
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