内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 氏に関すること 】

夫の死亡・親族との縁切り
虫のいい話ですが教えてください。
昨年末、夫が病気で亡くなりました。義父は既に亡くなっているので、義母(姑)と私の2人が家に残りました。2人いた子供たちは成人して家を出ています。
私はこの姑と折り合いが悪く困っています。実は私は結婚してから現在までも、ずっと仕事を続けているのですが、姑はそれが気に入らず、長年ケンカが絶えないのです。
私もほとほと疲れたので、夫がなくなったこの際、姑と縁を切りたいと考えています。クッション役になってくれた夫がいなくなった今、とても姑とうまくやっていく自信がないのです。
ただ、仕事は続けていくつもりなので、虫がいいと言われそうですが、姓は現在の(夫の)姓を引き続き名乗っていきたいと考えています。このようなことは可能なのでしょうか?
相談者: 兵庫県在住の女性(48才)
1.ご質問に対する回答を先に申し上げますと、相談者は、現在の姓(夫の姓)を引き続き名乗ることができます。
2.夫婦の姓(民法では「氏」といいます。)について、民法では、次のように、定められています。
まず、夫婦は、結婚(民法では「婚姻」といいます。)の際に定めた夫又は妻の姓のいずれかを称します(民法750条)。必ずしも、夫の姓を名乗らなければならないと言うわけではありません。
次に、夫婦の一方が死亡したときは、残された配偶者は、結婚前の姓に戻すこと(「復氏」といいます。)ができます(民法751条)。
「結婚前の姓に戻すことができる。」のですから、夫が死亡しても、何もしなければ、妻は、結婚時の姓(夫の姓)のままなのです。
3.残された妻が結婚前の姓に戻るには、旧姓に戻りたいということを役所に届け出なければなりません(戸籍法95条)。ただし、届け出期間の制限はありません。
4.ところで、相談者は、姑との縁を切りたいと考えているようですが、夫の死亡をきっかけに、姑との親族関係を終了させようとするときは、届け出期間の制限はありませんが、そのことを役所に届け出なければなりません(民法728条)。
夫が死亡したからといって、何もしなければ、姑との親族関係は続くのです。
これに対し、姑の方から、妻との親族関係を終了させることは認められていません。
5.ここで、勘違いしないで欲しいのは、結婚前の姓に戻すかということと、姑との親族関係が終了するかということとは別の問題なのです。
結局、夫が死亡した場合、旧姓への変更と姑との親族関係の終了との関係は、(1)姓をそのままに、姑との親族関係を残す、(2)姓をそのままに、姑との親族関係を終了させる、(3)姓を結婚前に戻し、姑との親族関係を残す、(4)姓を結婚前に戻し、姑との親族関係を終了させる、の4通りとなります。
相談者の場合、(2)のパターンとなるでしょう。
以上の説明は、妻が死亡したときの夫の場合にもあてはまりますが、夫は、結婚しても姓を変えない場合がほとんどでしょうから、実際上、妻の親兄弟などとの親族関係を終了させるかどうかだけが問題となると思われます。
6.ちなみに、離婚した場合どうなるかを説明します。
まず、姓の関係ですが、離婚の場合、姓を改めた者(多くの場合、妻)は、原則として、旧姓に戻りますが(民法767条1項)、離婚の日から3ヶ月以内に届け出ることによって、結婚時の姓を名乗ることができます(民法767条2項)。配偶者の死亡の場合とは、逆になります。また、届け出期間も定められている点に注意を要します。
次に、親族関係ですが、離婚によって結婚は解消し、配偶者の親兄弟などとの親族関係も当然に終了します(民法728条1項)。この点も、死亡の場合とは異なります。
出典: 土曜日の人生相談(2001年3月17日放送分)
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