内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 不倫 】

夫が不倫した場合、慰謝料を誰に請求できるか?
夫の不倫で悩んでいます。
私の夫は、2年ほど前に自分の職場のOLと不倫をしていました。夫の素振りからその事実を知った私は、何度もその女性と別れるように頼みました。「女と別れなければ離婚する」とまで言って、ようやく夫は愛人と別れると約束したため、私はそれ以上は夫を責めず、私たちの生活は平穏に戻ったと信じていたのです。
ところが最近になって、我が家に無言電話やいたずら電話なとがかかることが多くなりました。一度なとは電話をとった私に、女性の声で「年増ババア」とか「妻失格」などひどいことばを吐くのです。おかしいと思い、夫を問い詰めたところ、夫がまだその女性と不倫関係を続けていたことがわかりました。電話でいやがらせをしてくるのは夫の不倫相手だったのです。
一度は「別れる」と言っておきながら、私を裏切った夫にはホントに腹が立ちますし、何よりも相手の女性が許せません。夫とは離婚しようと考えています。私は夫とこの女性の両方に慰謝料を請求する事ができるでしょうか?
相談者: 大阪府にお住まいの46才の女性
ご主人の不倫に耐えられないので離婚して双方に慰謝料を請求したいとの事ですが、慰謝料を請求するためにはご主人たちの行為が明らかに不倫であることが必要です。たとえば、肉体関係がない場合には不倫にはあたりません。不倫であることが立証できる材料があれば、不倫はあなたに対する不法行為にあたることから、基本的には夫と相手方の女性の双方に慰謝料請求ができることになります。
まず、ご主人との関係からご説明します。
ご主人とあなたの夫婦関係がどのような状態になっているかわかりませんが、離婚しなければならない状態か否かが大きなポイントになります。上記のように理論的には夫婦間でも不法行為が成立し、慰謝料の請求が可能ですが、別居して、家計が別々になってしまえば別として、同居しながら同じ家計で生活を営んでおれば財布は1つですからおよそ現実的な話ではないでしょう。
そこで、次に離婚しなければならない状態の場合ですが、不倫というのは、不貞行為として離婚原因になります。そして、もし離婚となれば、離婚原因を作ったご主人には当然、慰謝料を支払う義務があります。ところで、離婚の手続としては当事者間で話合って離婚する協議離婚と、家庭裁判所の調停で調停委員をはさんで話合いをする離婚調停と、相手方がどうしても応じない場合に、裁判所へ訴えて離婚を認めてもらう裁判上の離婚があります。協議離婚や調停離婚では話合いですから、相手が払うといえばそれで済みますが、払わないといったときは問題です。別れるのはOKだけれど、慰謝料は払いたくないということで、条件闘争の様相を呈することもしばしばです。やむなく裁判ということも少なくありません。不倫は不貞行為として離婚原因にあたりますが、一切の事情を考慮して、婚姻の継続を相当と認めるときは離婚の請求を棄却される可能性もあります。
他方、相手の女性にも婚姻関係を破綻に導いた者として不法行為責任があります。ただ、不倫は1人ではできません、相手があなたのご主人ですから、責任は双方にあるとして夫とあわせて慰謝料額が考慮されることになるでしょう。
出典: 土曜日の人生相談(1998年12月5日放送分)
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