内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 悪徳商法 】

注文していない商品の代金を請求されたらどうしますか?
通信販売についてお聞きします。
先日、我が家に代金引換の宅配便で、小荷物が届きました。
商品を注文した覚えはなかったのですが、常日頃、通信販売をよく利用していますし、金額も3500円程度とたいして高額ではなかったため、夫が注文したものかと思い、お金を払って受け取りました。
中身を見てみると、自然の風景を映した環境ビデオソフトが入っていました。ところが帰宅した夫に聞いたところ、まったく覚えがないとのこと。どうやら先方のビデオ会社が勝手に送りつけてきたようで、私はダマされてお金を払ってしまったようです。
そこでうかがいたいのですが、こういう場合払ってしまったお金を返すように請求することはできるのでしょうか。大きな金額ではないのですが、何となく腹が立つものですから。
相談者: 大阪府在住の女性(37才)
1支払義務はあるか?
この「環境ビデオソフト」について、相談者の方も、夫も「覚えがない」「買ったことがない」のでありますから、売買契約は成立していません。
つまり、売買契約は、売主の「売ります。」という意思表示と、買主の「買います。」という意思表示の合致があって、初めて成立するものです。「買います。」という意思表示がない以上、売買契約の成立そのものが認められないことになります。
売買契約が成立していない以上、相談者の方にも、その夫にも、「代金支払義務」は存在しないことになります。
したがって、相談者の方は、「支払義務がないのに、お金を支払った。」ということになります。相談者の方がいくら、「夫が注文したものか」と思ったとしても、事実として、売買契約は成立していないのですから、代金支払義務が存在していなかったことにはかわりがありません。
2返還を求めることができるか?
義務がないのに支払った場合、払ったお金はどうなるのかといいますと、「不当利得返還請求権」という権利に基づいて、返還を求めることができます。不当利得とは、法律的な理由がないのに、得た利得のことを言います。
また、本件の場合、最初から、「勘違いさせて払わせる。」ことを目論んで計画的に行われたものだとしたら、これは、「詐欺」になります。したがって、払った代金は、詐欺を理由とした損害賠償として相手に請求することもできます。
最近、福祉団体から、「もし、趣旨に賛同いただければ買ってください。」として、はがきなどの商品を送ってくることがあります。しかし、そういった場合は、「不要の場合は返送してください。」といったことが必ず記載されていますし、代金の払い方も振込みであることが多いようです。相談者の方の場合は、代金引換の宅配便で送られて来ており、最初から、「勘違いさせて払わせる。」と仕組まれた可能性が高いようです。
ただ、返還請求しても、なかなか払ってくれない恐れもあります。弁護士に相談したり裁判を起こすにしても、請求金額3500円に比べて費用がかかりますので、法的措置に踏み切れないかもしれません。
業者の方も、「3500円だったら、あきらめるやろう。」と計画しているのでしょう。
刑事事件として
詐欺であれば、刑事事件として警察に告訴することもできます。同種被害が多数例があり、悪質な業者であれば、警察が動いて、摘発されます。
出典: 土曜日の人生相談(2001年2月17日放送分)
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