内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 損害の請求 】

肖像権の侵害とは
肖像権についてお聞きします。
わたしはインターネットに自分のホームページを開いており、そこに趣味の写真を掲載しています。旅行の記念写真や家族の写真などが中心なのですが、たまたま年末年始に旅行したときに出先でテレビ生中継をやっており、そこに出演していた有名タレントと一緒に記念写真をとってもらうことができました。
そこでその写真をホームページに掲載しようとしたところ、知人から「他人の肖像を勝手にホームページに掲載すると肖像権の侵害となって訴えられるぞ」と注意されました。
そこでうかがいたいのですが、こういう写真をホームページに掲載することはやはり肖像権の侵害にあたるのでしょうか。
また、これまでに掲載してきた旅行の写真にも、一般のたくさんの人が写っていますが、こういう写真はどうなのでしょうか。
やはり肖像権の侵害にあたるので、掲載しない方がいいのでしようか。
相談者: 兵庫県在住の男性(63才)
1.肖像権の意味としては、個人のプライバシーの保護として承諾なしにみだりにその容貌、姿態を撮影されない権利と言われています。
まず、有名タレントと一緒に写真をとってもらったとのことですね。
ただ、このケースはタレントさんも記念写真をとることは承諾されていますので、みだりに撮影されたことにはなりませんから、あなたがその写真を持っている分には何の問題もありません。
ただ、インターネットに流すということは公表することになりますので、問題ではないかということです。
相談者は自分のホームページを何の目的で開いているのでしょうか。何かをテーマとして第三者に訴えたいということだと思います。そうすると1つの表現の自由が保障されていることになります。それと営利目的はないと考えてよろしいでしようか。
肖像を公表されたくないという権利も肖像権の1つの内容になりますが、相談者がその写真を公表することが侵害行為となるのかという問題です。
有名タレントの場合は、その肖像を世間に秘匿することはないのですから、皆んなが知っているのですから、そもそも公表を拒む権利は強くないのです。相談者がホームベージに掲載する意味はそのタレントと並んで写真をとったという事実だと思いますし、問題はないと考えます。
ただし、営利目的で利用すると侵害行為となる可能性はあります。有名人は自己の肖像を対価を得て第三者に利用させる財産的権利(パブリシティ権といいます)を肖像権の1つの内容として持っていますのでこの権利を侵害したということになります。
さて、一般人の場合はどうでしょうか。
よくテレビニュースで街角風景が写ります。大雪が降ったときのニュースで転んでいる人が写っていますね。本人とか知り合いの人は、「あいつこけてる」と話に花が咲くでしょう。しかし、本人はイヤですね。しかし、これは肖像権とかプライバシーの侵害とはなりません。その理由はニュースが極めて公共性の高いものであり、他方で一般人の感受性を基準として見たときに撮影された人がその肖像を秘匿すべきことか否かという判断をして侵害か否かを決めることになりますが、隠し通したいというものでないと結論づけられるからです。
相談者のケースはニュース報道でもありませんのでさらに検討をしてみます。
旅行の写真に写った人を掲載するのはどうかという質問ですが、風景の一部として人物が写っている程度なら、その人の肖像権はかなり制限される、つまり弱められると思いますので掲載しても構いません。
相談者の持っている写真もそういうものだと思います。
ただし、人物が主体となっている写真はその人の承諾がなければ掲載は控えるべきです。この点はタレントとの違いがあります。
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追記 ひと口に肖像権と言ってもその内容は複雑です。写真を何の目的に利用するのかで結論が変わってきますし、写真の内容(どんな風に写っているのか、顔がアップとなっているのか、多数の人が写っているのか、風景に溶けこんでいるだけなのかetc)にもよります。
裁判例でも肖像権の侵害を認めるものと認めないものとがありますが、いずれもケースバイケースの判断となっています。
有名人の場合、次のような判決があります。
「俳優等の職業を選択した者は、もともと自己の氏名や肖像が大衆の前に公開されることを包括的に許諾したもので、人格的利益の保護は、大幅に制限されると解しうる余地があり、肖像が広く大衆に公開されることを希望しており…」
出典: 土曜日の人生相談(2001年2月10日放送分)
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