内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 保証人 】

保証人の責任
車のローンの保証人についてお聞きします。
昨年末に、あるファイナンス会社から、車のローン残金(約80万円)を払うようにと、夫に催告状が届きました。夫が、以前勤めていた会社で社用車の購入する際のローンの保証人になっているというのです。夫は2年前にその会社を退職しており、会社から営業用として借りていた車は退職時に会社に返しているので、納得できずファイナンス会社に問い合わせました。
すると、夫のいた会社は昨年秋に倒産しており、支払不能になったローンの残りを保証人である夫に払えというのです。
夫によると、その車は営業の外回り用に日常使用するため、自宅の駐車場の車庫証明書をとるため、署名、捺印をした覚えはあるそうですが、ローンの保証人になった覚えはないとのことです。
確認をとろうにも会社の社長は行方不明になっており、連絡が取れません。このような場合、ローンの残金を払わなくてはならないのでしょうか?
相談者: 大阪府在住の女性
1.ご質問の場合、ご主人が、お勤めになっていた会社とファイナンス会社とのローン契約について、保証をしていたか否かが問題になります。
もし、ご主人が保証をしておられれば、ご主人はローンの残金を支払わなければなりません。その後に会社を辞めていることや、営業車として借りていた車を会社に返したことは、ご主人の責任を軽減する理由にはなりません。また、よく「絶対に迷惑をかけないと言われたので保証しただけだ」といったことをおっしゃる方もいますが、債務者(この場合の会社)との間でどのような話があったかは、ローン会社もそれを予め承知していたという特殊な事情がない限り、ローン会社には主張できません。
2.そこで、本件ではローン契約書の保証人欄にご主人の署名捺印があるかどうかが問題になります。まずローン会社に、ローン契約書を見せてくれるよう、できればそのコピーをくれるように申し入れて、
(1)保証人欄にご主人の氏名が書かれているか。
(2)それは、間違いなくご主人自身の筆跡によるものか。
(3)押捺されている印影には見覚えがあるか。
を確認して下さい。
3.ローン契約書の保証人欄にご主人自身の署名捺印があれば、ご主人の責任を回避することはまず無理だと思われます。通常、ローン会社は、会社毎に契約条項などを印刷した定型のローン契約書を作っており、個々の契約ではその定型のローン契約書に必要事項を書き込んで使用しています。本件のローン契約が、そのような定型の用紙を使用して、保証人欄にご主人の署名、捺印があるという場合、ご主人は、当然、自分が保証人になることを知った上で署名捺印したものと考えられますので、保証人として責任を負わねばなりません。ローンの残りを支払う必要があります。
この場合、「他の書類だと思った」とか「内容を見ないで署名した」という言い訳は、そもそも文字を読めないとか意思能力が欠如しているといった特別な事情がない限り、ほとんど通用しません。
4.しかし、そもそも契約書の保証人欄にご主人自身の署名が書かれていなければ、ローン会社がご主人との保証契約を証明することは困難です。ご主人はローンの残りの返済を免れることができるでしょう。
法律上は「保証する」という口約束だけでも責任は発生します。
ただ、「言った」「言わない」で争いになった場合、中立の第三者の証言でもない限り、口約束の存在を証明することができないので、ローン会社は契約に基づく請求ができないということになるのです。
5.このように、ご主人の筆跡でない場合、第三者が勝手にご主人に代わってローン会社と保証契約をすることはできませんので、ご主人が予め承諾していない限り、「保証した覚えはない」としてローンの支払いを拒絶できます。
ただし、その場合でも、捺印がご主人の実印でされている場合には問題があります。一般的に、誰かが勝手に他人の実印を使用するということはあり得ないと考えられています。そのため実印が押されている場合、ご主人自身が実印で押捺した、もしくは第三者に契約の代理権を与えて実印を預けた、つまりご主人は予め保証を承知していたと推定され、保証責任が発生する可能性が高くなります。また、実印でなくとも、ご主人が自分で管理し、普段使用している印鑑で捺印されている場合にも、同様の問題が生じます。
出典: 土曜日の人生相談(2001年2月3日放送分)
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