内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 兼業・兼職 】

兼職禁止規定に反した場合の法律関係
会社の服務規定についてお聞きします。
私は大阪市内の某会社に勤務しています。以前からパソコン操作が趣味だったのですが、最近知人から頼まれて、週に3回、パソコン教室の講師のアルバイトをするようになりました。
ところが、このことを知った上司から「会社の服務規定では、副業は一切認められない。すぐやめるように」と注意されました。勤務時間を過ぎてからのアルバイトで、仕事にはまったく支障がないのに禁止するのはおかしいと抗議したら、「服務規定で禁止されている以上、禁止は禁止。違反すれば処分もあり得る」と言われてしまいました。
そこで、伺いたいのですが、このような場合、会社の業務に支障がないのに、違反として処分されても仕方がないのでしょうか?勤務時間以外の時間をどう使おうと個人の自由だと思うのですが。
相談者: 兵庫県在住の男性(40才)
1.兼職禁止の規定について
多くの会社は就業規則で「会社の許可なく他人に雇い入れられること」を禁止し、それに違反すると懲戒(解雇されたり減給されたりする不利益な処分)理由に該当すると定められています。これは一般に「兼職禁止の規定」と言われていますが、あなたの会社にも同様の規定が定められていたというわけです。
2.この規定の有効性
労働者は会社で定められた一定の勤務時間以外は本来使用者(雇い主)の支配を離れて自由であるはずですが、とすればそのような規定はそもそも無効なのでしょうか。多くの裁判例では「そのような規定は、労働者が就業時間外に適度な休息をとることが誠実な労務提供のための基礎的条件であり、また兼職の内容によっては会社の経営秩序を害することもあり得るから合理性があり有効である」
と考えられています。
3.兼職禁止の範囲
この規定自体は有効であるとしても、どのような場合にでも兼職が禁止されると考えるのはやはり勤務時間外は本来使用者の支配が及ばないという原則から見て行き過ぎです。そこで裁判所も兼職禁止の範囲については限定的に解釈し、会社の職場秩序に影響せず、かつ、会社への労働の提供に格別の支障を生じさせない程度の兼職はこの規定に違反しないと考えています。
4.本件ではどうでしょうか
あなたの場合、まずアルバイトの勤務時間が問題となります。1回につき1〜2時間であれば翌日の会社業務に差し支えるということはまずないでしょうが、1回につき5〜6時間を超えるとなると幾ら体力に自信があっても休養時間があまりに制限され、翌日の勤務に差し支えるとみなされてもやむを得ないでしょう。
次にアルバイトの内容ですが、あなたの会社がパソコンの製造・販売等に関連する会社の場合、あなたのアルバイトの内容は会社に勤務することによって得られた知識・ノウハウを外部に漏らすことになるので禁止されてもやむを得ませんが、文面では「趣味」のパソコンを活用してとありますので、どうも会社の業務とは直接には関係なさそうです。
以上の点からみて、どうもあなたの場合はアルバイトをしても会社の職場秩序に影響せず、かつ、会社への労務の提供に格別の支障を生じさせないケースと考えられるので、兼職禁止の規定に違反しないと言ってよいでしょう。
5.今後の対応
そうは言っても上司があなたにわざわざ忠告してくれているのですから、これを無視するのは得策とは思えません。今述べた内容を上司に伝えて出来る限りの理解を求めるべきでしょう。それにもかかわらずあなたに何らかの不利益な処分がなされた場合には、労働基準監督署に相談するか、労働組合に持ち込むか、弁護士に相談する等の対応をするべきです。
出典: 土曜日の人生相談(2001年1月20日放送分)
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