内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 賃料増額・減額 】

賃料の減額ができる場合
賃貸住宅の家賃についてお聞きします。
我が家は現在の賃貸マンションに入居して5年になります。
最近、同じ階に新しく引っ越してきた人と話していたら、同じ階で、同じ間取りなのに、ウチより家賃が1万円も安いことが分かりました。最近、周辺に新築マンションがいくつも建ったために、家賃相場が下がっていたらしいのです。知らなかったとは言え何となく不公平なようで納得できません。
そこで、伺いたいのですが、このような場合、大家さんに交渉して、以前の賃貸契約を改めて、我が家の家賃も新しい人と同じレベルに値下げしてもらうように求めることはできるのでしょうか?
相談者: 大阪府在住の女性(38才)
1.家賃の減額請求権はあるか?
ご質問のような賃貸マンションの賃貸借契約について定めた法律である「借地借家法(しゃくちしゃっかほう)」は、平成3年10月4日に成立し、平成4年8月1日から施行されています。それで、平成4年8月1日以降の建物賃貸借契約については、すべてこの法律が適用されることになりますので、貴方の場合(入居して5年というのですから、平成8年ころに締結された賃貸借契約でしょう)にもこの「借地借家法」が適用されます。
建物賃貸借契約の最も重要な要素である「家賃(賃料)」の増額や減額についても、勿論この法律に規定があります。借地借家法第32条1項本文を読んでみましょう。
「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」
わかりやすく、まとめますと、法律が家賃の増額・減額を請求できる場合として掲げているのは、
(1)土地又は建物に対する租税その他の負担の増減
(2)土地又は建物の価格の上昇若しくは低下
(3)その他の経済事情の変動
(4)近隣の建物の賃料に比較して不相当となった
という4つのケースです。
そして、これらの事情が認められれば、「当事者」すなわち建物の貸主(賃貸人)にも借主(賃借人)にも同じように家賃の増額・減額請求権が与えられているのです。
したがって、貴方の場合、同じマンション内の同じ階で同じ間取りなのに家賃が1万円も安いことや、周辺に新築マンションがいくつも建ったために家賃相場が下がっていたらしい、との事情がありますから、上記の(4)近隣の建物の賃料に比較して不相当となったケースに該当し、減額請求権が認められるでしょう。
2.その実現方法
問題は、その家賃減額請求の方法ですがまずは家主に対して、以上の理由を説明して直接減額の交渉を進めてみて下さい。
家主が納得して、減額に応じてくれればそれに越したことはありません。契約そのものの書き替えではなく、家賃だけの修正で足ります。
しかし、従来、家主からの「増額請求」は普通にあることでしたが、借主からの「減額請求」はあまりポピュラーでなく、家主も面食らうかもしれませんし、今までの賃料収入が減る上に、他の借主まで「われもわれも」となっても困りますので、「減額はできない」と拒否される可能性も相当あります。
この場合には、裁判所に「民事調停」の申立をして、裁判所に適切な家賃を決めてもらうことになります。「民事調停」は、裁判(訴訟)とは違って裁判所で行う話合いで、裁判よりは費用が安いし、話合いがつかない場合にも裁判所が決定をしてくれます。これでどうしても決着のつかない場合に初めて裁判ができることになりました(調停前置主義。裁判の前に必ず調停の手続をふんでおかねばならないこと)。
出典: 土曜日の人生相談(2001年1月13日放送分)
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