内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 婚姻費用 】

妻が子供を連れて勝手に出て行った場合でも生活費を支払う義務がありますか?
別居中の妻への生活費の支払についてお聞きします。
先日、妻が2才の息子を連れて家を出ていってしまいました。理由は、私と「性格が合わない」ということです。妻は東京出身で、私が東京支社勤務のときに知り合い、恋愛結婚したのですが、昨年、私が大阪本社勤務になったのを機に、家族で大阪に移ってきたのです。ところが妻には関西の暮らしが合わなかったようで、ことあるごとに「東京に戻りたい」と言っていました。私は「わがままを言うな。自分から馴染む努力をせえ」と、強く言っていたのですが、妻は耐え切れなかったようです。妻は、親の反対を押しきって私と結婚した手前、実家に別居したことを隠しているようで、実家からさほど遠くないアパートを借りて生活しているらしいのです。そこで、「子供が小さいので働けない。生活費を送れ」と言ってくるのですが、私はこの要求にこたえる義務があるのでしょうか。妻のやり方には腹が立つのですが、子供のことを考えると悩んでしまうのです。
相談者: 大阪府在住の男性(32才)
これは一般に「婚姻費用の分担」と言われている問題です。別居している夫婦間でも生活にかかる費用を分担することが必要となります。一般的にはこの分担は、働いていない妻から働いている夫への請求という形で現れることになります。
婚姻費用の分担額は、それぞれの収入、資産、生活のためにかかった経費等の諸要素を総合的に考慮して算定します。また子どもの監護のために必要な費用も、婚姻費用に含まれます。
では今回のご相談のように、別居にあたり責任がある者からの婚姻費用の分担請求にも応じなければならないのでしょうか。
前記のとおり婚姻費用の分担額は様々な諸要素を総合的に考慮して算定されますが、裁判例によれば、この諸要素の中で別居に至る事情も1つの算定要素として考慮されています。すなわち、請求者側に不貞や異常な嫉妬、勝手な家出などの有責原因や夫婦協力関係回復の意欲と努力の欠如などの事情が存在した場合に、婚姻費用の分担責任(要するに金額)が軽減されているのです。今回のご相談でもこの点が認められれば、少なくとも妻の生活費の分担金額については軽減されることでしょう。
ただし本件で奥さんは2歳の息子さんを連れて家を出ています。婚姻費用中の子どもの監護のための費用については、別居にあたり責任がある親からの請求も軽減されたり排斥されたりすることは原則的にありません。
本件における別居の事情については妻の側にもそれなりの言い分があることでしょうが、仮に妻の側に責任が認められれば、それは婚姻費用の分担額の軽減事由になります。ただし子の監護のための費用のことを考えれば完全に排斥するわけにはいかないと思われます。
出典: 土曜日の人生相談(2001年1月6日放送分)
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