内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 貸金請求 】

借り入れたお金を用途以外に使った場合返還を請求できますか?
お金の貸し借りの約束についてお聞きします。
私の夫は最近50万円を友人に貸しました。事業がうまくいっていないのでなんとか頼むと言われて、6ヶ月の期限つきで無理してボーナスから貸してあげたのです。
ところが、先日、夫はその友人が高級新車を乗り回しているところに出くわしたのです。どうしたのかと聞くと、実は別に頼んでいたところからの資金繰りがついたため、余裕ができて車を買い換えたとのこと。それも夫が貸したお金を頭金にしたらしいのです。
大人しい夫も腹を立て、「約束が違う。貸したお金をすぐ返せ」と言ったところ、「借りたお金をどう使おうと借りた方の勝手。約束通りに返せば問題はないはず」といい返されたのです。
そこで伺いたいのですが、こういう場合、貸したお金が当初の目的とは別に使われた場合、約束が違うということを理由にすぐに返済を求めることはできるのでしょうか。
相談者: 京都府在住の女性(45才)
I  金銭消費貸借
お金の貸し借りは、法律的に言いますと、金銭消費貸借契約ということになります。
期限を定めて消費貸借契約を結んだ場合、借り主は、借りたお金(利息支払いの約束があればそれも含めて)を、約束の期限に返せばそれでよいというのが原則となります。
しかし、本件の場合、貸した方からすると、即座に返してもらいたくなるような事情があります。即時返還を求める構成を考えてみます。
II  詐欺・錯誤
1.まず、夫の友人が、当初より、事情をごまかしてお金を借りようと考え、それがうまくいったという場合ですが、その場合は、夫とすれば、事情がわかっていれば貸すこともなかったと言えますから、詐欺に当たると考えられます。
詐欺によって行われた契約は、取り消すことができます.取り消されると、そもそも、消費貸借契約がなかった状態になりますから、期限に関わらず、貸したお金を即座に返せということができることになります。
2.事業がうまくいっていないので何とか頼むと言われて、事業資金として貸し付けるのだということが明らかとなっていた場合、夫は、勘違いをしてお金を貸してしまったことになります。
そのような場合、契約は錯誤により無効と主張することも可能と思われます。無効とされる場合でも、やはり、即座にお金を返せといえることになります。
3.当初より事情をごまかそうとはしていなかったものの、借り受けまでには資金に余裕ができていたという場合は、基本的に、同様に考えていいと思います。
III  「約束が違う」
1.以上に対し、お金を借りた後、たまたま、他の資金繰りがついたという場合には、即座に返せというのはすんなりといかないように思います。
2.例えば、事業資金としての貸付であることを明らかにし、それ以外に使用したときは即座に返還するとの約束ができていた場合、夫が貸したお金を頭金にして高級新車を購入したとすると、文字通り「約束が違う」ということで、即座に返還を求めることが可能でしようが、そこまでの約束はされないのが通常ではないかと思います。
はっきりとした約束がない場合、当事者間の合理的な意思解釈として、黙示的な約束、いわゆる暗黙の了解があったとか、信義誠実の原則、公平の観念を持ちだして、即座の返還を求めることになります。本件では、6か月後に返せば問題がないというのは不公平であるように感じますが、はっきりとした約束があった場合と比べると、認められる可能性は低くなるでしよう。
出典: 土曜日の人生相談(2000年12月30日放送分)
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