内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 保証 】

「根保証」の保証人って何のこと?
借金の保証人についてお聞きします。
先日、夫が知人から借金の保証人になってくれと頼まれました。もちろん私は反対なのですが、古くからのつきあいのある友人の頼みということで、夫は受けると言います。
知人が借金する金額は100万円なので、その金額なら、最悪の事態で負担することになっても何とか返せる、と夫は言うのですが、その際に、借金の条件として、極度額を500万円とする根保証をしなければならないというのです。
夫は「借金が100万円までなら心配せんでもいい」と言うのですが、私は「根保証」ということばを初めて聞いたので、何やら不安です。この「根保証」というのは、どういう意味で、どういうことに気をつけなければいけないのか、教えていただけないでしょうか。
相談者: 大阪府在住の女性(46才)
1.「根保証」を説明する前に、一般的な保証の説明をします。
2.保証には、単なる保証と連帯保証があります。
両者で大きく異なることなる以下の3点です。
(1)最初に、単なる保証人であれば、債権者に対し、「先に借りた本人に返してもらえ。」といえます。
しかし、連帯保証人であれば、債権者が借りた本人に請求する前に連帯保証人に請求してきた場合、「まず借りた本人に返してもらえ。」とはいえず、債権者の要求に直ちに応じなければなりません(もちろん、保証額の範囲内ですが)。
(2)また、単なる保証人の場合、債権者に対し、「借りた本人に無担保の不動産があるだろう。その不動産に強制執行をして回収を図れ。」といえますが、連帯保証人の場合、これがいえません。
従って、連帯保証人は、債権者の請求を無視し、そのまま放置していると、借りた本人にたくさんの財産があっても、裁判所の判決などに基づき連帯保証人の財産、例えば連帯保証人所有の土地などに対し、強制執行されることがあります。
(3)さらに、例えば、200万円の貸付で、単なる保証人が2人いる場合、保証人が債権者の請求に応じなければならない額は、頭数2で割った100万円です。
しかし、連帯保証人の場合、たとえ連帯保証人が何人いても、債権者が200万円の請求をすれば、これを拒むことはできません。もっとも、貸付金額が200万円ですので、連帯保証人それぞれに対し、それぞれ200万円の請求しても、1人の連帯保証人が200万円全額を支払えば、他の連帯保証人が支払わなくてもよくなることは当然です。
以上の説明は、今日のご質問の「根保証」と次元が異なります。単なる保証で根保証の場合もありますし、連帯保証で根保証の場合もあります。
3.さて、ご質問の「根保証」ですが、その内容は、一般的にいえば、特定の債権者と特定の債務者との間で将来に亘って行われる種々の取引から生ずる不特定多数の債務を将来に亘って保証人が保証するというものです。
貸金を例に具体的に説明すれば、根保証ではない保証では、本人が債権者から100万円を借り入れ、保証人がこの100万円の借入について保証をした場合、借りた本人がこの100万円を返済すれば、保証人の責任も消滅します。
しかし、根保証の場合、本人が最初に借りた100万円を返済しても、保証後、別の借入を行っていれば、その借入についても保証責任を負うこととなります。
4.このように、「根保証」は、保証人にとって、非常に責任が重くなることから、その責任を限定するために、いついつまでに借り入れた本人の債務を保証するといった時期の制限や責任を負う額(これを極度額といいます。)を決めたりすることが行われます。
ご質問を例にすると、500万円の極度額であれば、本人の借入額が総額500万円以上となっても、保証人は、500万円の責任で済みます。
しかし、逆に言えば、500万円までは責任を負わなくてはならないということです(この点が重要です)。債権者は、本人への新たな貸し付けに際し、保証人に対して、「本人に新たに貸し付けましたから、保証人であるあなたの責任は500万円に増えました。」という通知を行いませんので、保証人は、自分の知らないところで、極度額の範囲内ですが、責任が増大していくわけです。
したがって、保証した当時の借入額100万円で済むと考えることは大きな間違いです。極度額500万円まで保証人の責任が生じる可能性があると考えなければなりません。
念のために申し上げますと、保証は、借りた本人の返済を担保するものですから、本人の借入金額が500万円以下なら、極度額が500万円でも、本人が借りた金額に限定されることは当然です。
5.なお、ノンバンクに対する根保証の契約書では、いついつまでに借り入れた本人の債務について、保証人は責任を負うと規定している場合があります。
この場合、期限後に借り入れた本人の債務については、いくら極度額内といえども、保証の対象にはなりません。
従って、債権者から「極度額が500万円だから、保証人の責任として500万円支払え。」と請求された場合でも、そもそも本人の借入が保証の対象となる期間内に借り入れたものであるかどうか、慎重にチェックして下さい。
6.保証をしようという人は、「自分が借りたわけでもなく、借りた本人がきっちり払ってくれるでやろ。」という安易な期待で保証することが多くあります。
しかし、債権者からみれば、借りた本人に信用がないからこそ保証人を付けるのです。
保証したことにより後で泣かないためには、保証した以上、自分が借りたという程度の認識を持たなければなりませんし、また、極度額を決めた以上、極度額まで自分が支払うことになるという覚悟を決めておかなければなりません。
したがって、よほどのことがない限り、安易に他人の保証人になることは、控えるべきでしょう。
出典: 土曜日の人生相談(2000年12月2日放送分)
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