内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 貸金請求 】

賭けマージャンの借金返す必要あり?
夫の賭け事での借金についてお聞きします。
私の夫は、麻雀が大好きで、週に2、3回は知り合いと卓を囲んでいます。お金も賭けているようなので、賭けごと嫌いの私としては、早く止めてもらいたいのですが、「俺の唯一の趣味だから認めてほしい」と言われて、仕方なく許していました。
ところが、最近夫の麻雀仲間から、夫の借金がかさんでいるという話を耳にしました。あわてて夫に問いただすと、この頃負けがこんで、100万円近くも、借金が溜まっているというのです。
そこで伺いたいのですが、本来、麻雀でお金を賭けたりする賭博行為は法律で禁止されていると思います。こういう場合の掛け金の借金も法律上は返済義務があるのでしょうか。なお、きちんとした借用証などはなく、借金額が記されたメモがある程度とのことです。
相談者: 大阪府に住む女性(41才)
1.民法は、「公の秩序または善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は無効とす。」としています(90条)。いわゆる「公序良俗により無効」というやつです。したがいまして、麻雀でお金を賭ける賭博行為は法律で禁止されていますし、善良な風俗に違反しますから、負けた人が勝った人に「今払えないけど、次には払う。」と約束しても法的には無効です。その時にきちんとした借用書を書いても同じです。ですから、負けた人が何時までたっても払ってくれないので、勝った人が裁判所に訴え出て、負け金を払えとは言えないわけです。つまり、法律上の返済義務はありません。
2.しかし、勝った人があんまり執拗に返せ返せというので、負けた人は消費者金融で借りてきて、払ったとします。この場合はどうでしょう。
3.まず、民法は「不法の原因のために給付をなしたる者はその給付したるものの返還を請求できない」としています(708条)。いわゆる不法原因給付と呼ばれるものです。
たとえば、賭け麻雀に負けた人が、勝った人に5万円払ったとします。しかし、この負けた人は考えるわけです。元来賭博行為はいけないことなのだから、5万円支払う行為は、法律的には無効である。とすれば、勝った人は法律上の原因がないのに5万円儲けていることになるから、いわゆる不当利得である。だから返せといえるのではないか、と。しかし、違法行為をしていることはわかってしていながら賭け麻雀をしておいて、負けたら後で無効を主張するなんて、何かずるい気がしますね。そこで、法律は不法の原因のために(賭け麻雀に負けた結果)、給付をなしたる者は(負け金を払った人は)、その給付したるものの返還を請求できない(5万円返せとは言えない)と定めたわけです。
4.つまり、負け金を払う前であれば返済義務はないが、払ってしまったら取り戻せないということです。これはそもそも法律は悪いことをした人には手を貸さないという理念からきています。
5.また、消費者金融に対する借金はどうなるかといいますと、貸す方はそのお金が何に使われるかは原則としてわからないわけですから、返済義務はあるということになります。
出典: 土曜日の人生相談(2000年11月11日放送分)
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