内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 ストーカー 】

Eメールが度々。これってストーカーなの?
ストーカー被害についてお聞きします。
先日インターネットの掲示板で、大阪在住の30代の男性と知り合いました。何回か電子メールのやりとりをした後に市内の喫茶店で会う約束をして、一度だけ一緒にお茶を飲みました。
その後、彼から私と交際したいというメールが届きましたが、好みではなかったため、交際を断る旨のメールを返しました。
ところがその後も、彼から1日に何十通も電子メールが届くのです。内容も「会いたい」「好きだ」「本当の僕を知ってほしい」などとかなり熱烈なものだったので、怖くなり、返事は出しませんでした。すると私の自宅に深夜、無言電話がかかるようになりました。受話器をとっても応答がないので、確かとは言えないのでずが、犯人はその男だと思うのです。
そこで伺いたいのですが、こういう大量のメール送信や無言電話などの行為はストーカーとして告発することができるのでしようか。現在のところ、直接つきまとわれたりという被害はないのですが、相手の行為がどんどんエスカレートするのではないかと心配です。また11月から新しく「ストーカー規制法」という法律が施行されると聞きました。その法律を適用して、この行為を告発することはできないのでしょうか。
相談者: 大阪府に住む女性(29才)
一. 大量のメール送信、無言電話などの行為について
1.現在の法律の下においては、メールを送ったり、無言電話をかけたりするだけでは、罪にはなりません。
2.ただし、メールの内容が脅迫ととれるようなもの…例えば「付き合わないなら、痛い目にあうぞ。」といった場合には、脅迫罪にあたります。
また、メールや無言電話が何回もかかってきて、仕事に差し支えが出たという場合。例えば、被害者の店(飲食店)に、3カ月足らずの間に、約970回にわたって無言電話をかけたケースでは、業務妨害罪が成立するとされました(東京高等裁判所昭和48年8月7日判決)。
3.相談者のケースのように、大量のメールを送ってきたり、無言電話でも「業務の妨害」に当たらないときは、罪にはなりませんので、これまでは、この段階で被害者が警察に相談しても、なかなか取り合ってくれなかったことが多かったようです。
そればかりか、行動がエスカレートして、自宅・職場・学校へ押しかけて来たり、待ち伏せされたり、尾行されたり、面会や交際を強要してきたりしても、具体的に脅迫がなされたとか、怪我をさせられたとか、住居侵入などの行為がなければ、犯罪として検挙することは難しいというのが、これまでの現状でした。
二. ストーカー規制法
1.しかし、例えいやがらせメールや無言電話であっても、被害にあった人から見れば、底知れぬ恐怖を感じるものです。加害者側にも被害者が困っているのを見て楽しむといった、全く悪質なケースもあります。
また、埼玉県桶川市では殺人という最悪の事態までおきました。
もっと早く警察が対応していたらと誰もが考えることでしょう。
そこで、このたびストーカー行為規制法が成立し、平成12年11月24日から施行されることになりました。
2.ストーカー行為規制法によって規制される行為
対象となる行為は、「つきまとい等の行為」であり、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨根の感情を充足させる目的で行う、(1)〜(8)の行為です。
ですから、「リストラされた恨み」や「悪徳商法による悪質な勧誘」には、たとえ「つきまとい」行為があったとしても、ストーカー行為規制法は適用されません。
なお、(1)〜(8)の行為を繰り返し反復して行うことを、「ストーカー行為」といいます。
(1)つきまとい、待ち伏せ、立ちふさがり、見張り、押しかけ
(2)監視していると告げること
例 「今日は○○さんと一緒に難波で食事をしていましたね。」と電話やメールで連絡する
(3)面会、交際等を要求すること
(4)乱暴な言動こと
例 大声で「このドアホ」と粗野な言葉を浴びせる
深夜に、家の前で車のクラクションを鳴らす
(5)無言電話・短時間に何度も電話、FAXすること
例 相談者の例…無言電話
(6)汚物、動物の死体等を送付すること
例 玄関の前に、猫の死体を置く。
(7)名誉を傷つけること
(8)性的羞恥心の侵害こと
例 わいせつな写真を送りつける
3.ストーカー行為をされた場合の対応
(1)ストーカー行為をされた者は、最寄りの警察署・警察本部に申し出て下さい。
被害者からの申出があれば、警察は、相手に対し、「つきまとい等」を繰り返してはならないことを警告することになっています。
(2)相手方が警告に従わない場合には、都道府県公安委員会がストーカー行為禁止命令を行います。
(3)警察に申し出て(1)(2)をしてもらうだけでなく、相手を告訴して警察に処罰を求めることができます。
4.ストーカー行偽に対する罰則
(1)ストーカー行為をした者
6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(ただし、被害者からの告訴が必要です)。
(2)都道府県公安委員会のストーカー行為禁止命令に違反してストーカー行為を継続した場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
(3)禁止命令等に違反した者は、50万円以下の罰金
5.警察の対応
ストーカー規制法ができただけでなく、警察では、平成11年12月に「女性・子どもを守る施策実施要網を定めて、ストーカーの事案に対して積極的に取り組んでいます。
大阪府警でも、女性相談コーナーをもうけるなどの対応をとっています。
三. まとめ
相談者の方は、早い段階で、一度警察に相談して下さい。
また、両親や知人友人で相談できる人があれば、その人にも話しを聞いてもらって下さい。決して1人で悩まず、複数の人間で対処することが大切です。
出典: 土曜日の人生相談(2000年11月4日放送分)
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