内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 遺産分割 】

娘名義の預金は、遺産の範囲か。
遺産相続についてお聞きします。
先日1人暮しをしていた義母が亡くなりました。高齢のために体調を崩し、2ヶ月ほど入院した末に亡くなったのですが、その後、自宅の遺品を整理していると、タンスの奥から、孫、つまり私の娘名義の預金通帳と印鑑が見つかったのです。預金残高は、およそ300万円になっていました。
私も娘も知らなかったのですが、娘が生まれてから、将来のために、こっそり積み立ててくれていたようなのです。義母はそれを私たちに伝えないまま逝ってしまったのです。
そこで伺いたいのですが、本人もその存在を知らなかった預金なのですが名義は娘になっています。この預金は娘のものとして受け取ってしまって良いのでしょうか。それともあくまで義母の遺産として、他の財産とあわせて、相続の手続きをしなければならないのでしょうか?
相談者: 京都府に住む女性(57才)
1.大阪弁護士会に聞きました。
義母が孫の名前で生前銀行預金をしていたということですが、この預金で預金者は誰かを考えねばなりません。預金者が誰になるのかが決まりますと相談の300万円が誰のものかが明らかにされる訳です。
2.さて、名義が孫さんになっていたということです。預金通帳の名義人だけを見れば、その孫さんが預金者だと考えることも不思議ではありません。しかし、そうはいかないのです。この300万円という現金を持っていたのは義母であって、預金として銀行に預け入れていたのも義母であることまでは事実ですが、何のためにそうしたのかは亡くなった今となっては判りません。孫が生まれてから将来のためにこっそりと積み立ててくれていたようですとのことですが、それが義母の意思であることを証明するものがありません。そうなりますと、孫名義の預金については、義母が孫名義を借りていたというだけになり(借名預金といいます)、その預金は義母のものになります。
3.一方、相談者によりますと、孫さんも自分の名義の預金があることを知らなかったのですから、義母と孫さんの間で生前贈与があったと見ることも無理でしょう。贈与というからには、贈る方と贈られる方とがお互い了解していることが必要となるからです。
4.したがって、義母の意思を明確にできないようですと、孫が預金を取得することは難しいでしょう。
5.では、この預金はどうするべきかということですが、他の財産とあわせて、相続の手続をすることになります。相続人は子供さんが中心となりますので孫さんは含まれません(代襲相続がないと考えて)。そして、相談者も相続人ではないようですので、相談者の夫が相続人となって、他の相続人がいれば、その人と分割協議をします。
6.その時に、この300万円の預金については相談者側の取得財産として含めてもらえば良いでしょう。
7.念のために言っておきますが、義母が孫さんに確実に贈与したいと考えれば、遺言を残しておくか、孫さんにはっきりと贈与の意思を伝えて、預金通帳を渡しておくことが必要だったと考えます。
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裏話
1.銀行との関係で孫さんが通帳と印鑑を窓口に持って行き払戻しを受けることは可能でしょう。(銀行が義母が死亡したことを知らなかったり、預金をするために窓口に来ていたのが義母であることを知らなかったりした場合です)
2.孫名義の預金を遺産として他の相続人に知らせないと、他の相続人は知らずに遺産分割をすることになります。
3.要するに、本質問は簡単なようでデリケートな問題です。
小生も感覚的には孫さんがその300万円の預金をもろときはったらエエンと違うかなと思っています。しかし、理屈では本文のとおりです。
出典: 土曜日の人生相談(2000年10月28日放送分)
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