内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 賃金 】

身元保証って、いつまで保証しなければならないの?
身元保証人の責任についてお聞きします。
7年ほど前のことなのですが、ご近所で親しくしていた方の息子さんが就職することになり、私は、頼まれて、息子さんの身元保証人となりました。その後、そのご家族は他県へ引っ越して行かれ、つき合いも途絶えてしまったので、保証人になったことなどもすっかり忘れていました。
ところが、最近になって、その息子さんか就職した会社から連絡があったのです。それも、彼が仕事でミスをして500万円の損害を負わせたまま会社を辞めてしまい、連絡が取れなくなったので、身元保証人である私に損害を賠償してほしい、というので、大変驚きました。
正直なところ、息子さんのことはあまり知らずに保証人を引き受けていましたし、特に保証書には有効期間などは書かれていなかったと思うのですが、私はこの損害を賠償しなければならないのでしょうか。
相談者: 大阪府に住む男性(67才)
1.身元保証契約について
身元保証契約とは、被用者がその責めに帰すべき事由によって、使用者に損害賠償債務を負う場合に、これを保証する契約をいいます。
身元保証契約に当たっては、本件相談者の方のように、保証期間等の定めがないことが多く、近所の方から頼まれて気軽に引き受けたにもかかわらず、その結果が余りに保証人に酷となる可能性があります。
そのため、昭和8年に「身元保証二関スル法律」が制定され、以後、現在に至るまで、身元保証人に不利な特約等は全て無効とし、できるだけ身元保証人を保護する法制がとられています。
す。
2.右法律の特徴
(1)適用範囲  身元引受・保証その他名称を問わない。
被用者の行為によって使用者が受けた損害を,賠償することを約した契約であればすべて適用されます。
(2)保証期間  期間を定めなかった場合は、契約成立の日から3年間のみ
但し、商工業見習者の場合は、5年間
期間の定めた場合も、5年を越えてはならない。
契約更新はできるが、5年を越えてはならない。
(3)通知義務  万一、使用者が被用者について、業務上不適任・不誠実なため、身元保証人の責任が生ずる恐れがある等の場合には、すぐに、右事実を保証人に通知しなければならないとされています。
そして、保証人は右通知を受けて、身元保証契約を解除する権利があります。
つまり、保証人に責任が発生する恐れがあることを知る機会を与えて、身元保証契約を責任発生前に解除できるようにしているのです。
(4)責任の限定  万一、保証人に責任を追及する場合でも、使用者の監督責任等の事情を考慮することになっています。
3.本問の回答
以上からすれば、
(1)相談者は7年前の身元保証契約であることから、被用者が通常の会社員であれば、3年の保証期間しか認められないことから、基本的には、身元保証人としての責任は免れることができます。
(3)ただ、万一、保証期間を更新する旨の条項が身元保証書に記載されていたとしても、余りに保証人に不利な条項であれば、右条項そのものが無効とされる余地がありますので、契約書がどのようになっているか検討する必要があります。
もっとも、一般には、保証期間の定めがなければ、更新条項は入れることはないと思われます。
(3)また、万一、保証責任が発生する場合でも、500万円の損害を全額相談者が負担する必要があるかどうかも、使用者の監督責任等により変動する可能性があります。
出典: 土曜日の人生相談(2000年10月14日放送分)
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